2種類の「見る」
和訳すると同じでも、フランス語では別の単語、ということがあり得ます。
逆もありますが…。
全く異なる言語なので、「A=B」ではなく、「A=BまたはC」になったりするのです。
今回は2種類の「見る」という動詞の違いをご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「J’ai bien frotté mes yeux.」「J’ai bien regardé.」の場所と背景を確認しておきます。
この2つのフレーズは、第2章の始めにあります。
第2章の3段落目(2段落目と3段落目の間には会話部分があります)の2つ目と3つ目のフレーズです。
「j’ai bien frotté mes yeux」
「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。
「bien」は「よく」、「frotté」は「こする」「磨く」などの意味の動詞「frotter」の過去分詞です。
「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「mes」は1人称複数の所有形容詞で、「私の」という意味になります。
所有形容詞は性や数で変化しますが、話し手ではなく、後に来る名詞の性・数によります。
「yeux」は、「目」や「視線」を意味する男性名詞「œil」の複数形です。
単数形と複数形がまったく異なる名詞です。
単数形「œil」の「œ」は、oとeがつながった文字ですが、「oeil」と書かれる場合もあります。
キーボードでは入力できないことが多いので、特殊文字の挿入を使います。
「j’ai bien regardé」
「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。
「bien」は「よく」、「regardé」は「見る」「眺める」などの意味の動詞「regarder」の過去分詞です。
「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
背景を見てみると
語り手の男性は飛行機の操縦士です。
6年前にサハラ砂漠で飛行機が故障してしまい、8日間のうちにひとりで飛行機の修理を余儀なくされました。
人里離れた砂漠で、死と隣り合わせの極限状態だったのですが、2日目の早朝に羊の絵をねだる男の子に目を覚まされます。
これが王子さまとの出会いでした。
疲れ果ててぐっすり寝ていたところを起こされたにもかかわらず、あまりにも場違いな王子さまの姿に驚いて飛び起きます。
今回のフレーズは、男性が飛び起きた後の様子の描写部分です。
「見る」
広大な砂漠にひとりぼっちだったはずなのに、いきなり子どもが一人で現れたら、かなりビックリするでしょうね!
そこで男性は、「よく目をこすって」「よく見た」わけです。
この「よく見た」ことを言うのには、「regarder」という動詞が使われています。
もう1つの「見る」
さて、この「見る」という意味を持つ動詞は、このシリーズの第172回ですでにご紹介しています。
そこで使われていたのは、「voir」でした。
つまり、日本語で「見る」という動詞は、フランス語では「regarder」になったり、「voir」になったりするのです。
意識して「見る」
「regarder」は、「(よく注意して)見る」「(見ようと思って)見る」という意味です。
今回のフレーズでは、目をこすってまで見ているので、本当にまじまじと見ていますね。
その他で「regarder」がよく使われる場面としては、「(テレビやパソコンの画面などを)見る」場合です。
「regarder」には、見る行為に自らの意識が伴っているということです。
なんとなく「見る」
それに対して「voir」は、「(視覚的に)見る」「(目に入ったので)見る」という意味です。
見ようとして見たわけではないけれど、目に飛び込んできたので見た場合などに使われます。
「voir」がよく使われる場面としては、「(景色を)見る」が代表的です。
また、「voir」が人を見たことに対して使われることがありますが、それは「(相手は気づかなかったけれど)見た」「(遠くから相手の姿を)見かけた」という場合などです。
「voir」は、なんとなく、普通に「見る」ということですね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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