95 王子さまの言葉づかいからフランス社会の人間関係を考えると Tu es bien joli…

名詞

フランス語で読むからこそわかる関係 

今回のフレーズは王子さまのセリフですが、相手との関係性が表れている瞬間でもあります。 

王子さまは人間に限らず、他のどんな存在が相手でも、常にある程度の礼儀をわきまえているのですが、例外的な相手のうちの1人(1匹?)が、このキツネです。 

そしてこの例を参考に、実際のフランス語でのコミュニケーションについても、お伝えします。 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Tu es bien joli…」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第21章の始めにあります。 

1枚目の挿絵から4行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。 

「tu es」 

「tu」は2人称代名詞単数です。 

2人称代名詞単数と言うと、「あなた」「きみ」「おまえ」などですが、「tu」は親しい間柄で使われます。 

複数になると、親しい間柄でも「vous」になります。 

「es」は、être動詞の2人称単数「tu」の活用形です。 

「bien」 

「bien」は、副詞です。 

「よく」「正しく」「非常に」「本当に」などの意味があります。 

「joli」 

「joli」は形容詞で、「きれいな」「かわいい」「すてきな」などという意味です。 

人・物の両方に使われます。 

女性形は「jolie」ですが、発音は変わりません。 

背景を見てみると 

とにかく誰かに会いたくて、歩き続けていた王子さまは、ショッキングな体験をしてしまいます。 

それは、5000本はあろうかという、たくさんのバラの花を見てしまったことでした。 

王子さまの星のバラの花は、自分は宇宙で唯一の存在だと言っていたのに、それは真っ赤なウソでした。 

そんな体験の後に、向こうから声をかけてきたのが、キツネです。 

王子さまは「きみは誰なの?」とたずねてすぐに、今回のフレーズを言うのです。 

ここでの「tu」 

今回のフレーズの「tu」が誰を指すのかは、カンタンですね。 

王子さまの目の前にはキツネしかいないのですから。 

王子さまとキツネは、お互いに「Bonjour.」と言った後、すぐに相手を「tu」で呼んでいます。 

でも、王子さまが最初から相手を「tu」で呼ぶのは、毎回ではありません。 

ひと目ですぐ、相手が親しくなれる存在だと思ったのかもしれません。 

「tu」と「vous」の関係 

先ほど、「tu」は親しい間柄で使われるとお伝えしましたが、初対面の相手は「vous」で呼ぶのが一般的です。 

王子さまは子どもですし、相手がキツネなので、このフレーズに違和感は全くありませんが、これが大人同士の会話なら、おそらく「vous」を使っているでしょう。 

そして、子どもが大人に使うべきなのも「vous」ですが、「vous」で呼ばれた大人が、相手の子どもに使うのは、「tu」が一般的です。 

こう言うと「大人は子どもをバカにしている」と思われるでしょうか? 

いいえ、それは違います。 

言葉づかいに見るフランス社会 

フランスは、日本のようにタテ社会ではないのですが、相手を「vous」で呼ぶことによって、若干の敬意を表す関係というものが存在します。 

また、日本よりはかなりゆるいのですが、年齢がかなり上の人には「vous」で呼ぶというのが、お決まりになっています。 

子どもが初対面の大人に対して「vous」を使うというのは、子どもなりに礼儀を重んじている姿なのです。 

そして、大人が子どもを「tu」で呼ぶのは、逆に親しみやすさを演出しているからで、バカにする意図はないのが普通です。 

実際のコミュニケーション 

ただし、フランス人ネイティブすべてがこの通りとは限りません。 

中には見下すような態度で、初対面から「tu」で呼んでくる人もいますし、それとはまったく逆で、あなたと仲良くしたいという意図があって、初めから「tu」を使ってくる人もいるでしょう。 

相手を見極めながら、こちらの態度を決めることになります。 

私自身は、こうしたことを知らずにフランスに来てしまったので、何度も失敗しながら人間関係を築いてきた経緯があります。 

参考にしていただけると、うれしいです! 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね! 

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