イライラしている?
今回のフレーズはごくシンプルながら、キーワードの「ça」により、話し手の投げやりな様子が伝わって来そうな表現です。
この「ça」という単語は、本当によく使われるのですが、よく考えると奥深いのです。
「2週間以内に中級レベルまでの文法をマスターする必要がある」というような、お忙しい方にはお勧めしませんが、『星の王子さま』をフランス語で味わいたいという方には知っていただく価値があると思います。
そして、入門期に「ça」という単語をよく理解することによって、フランス語でのコミュニケーションがラクになる可能性もありますよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Ça c’est la caisse.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の終わりの方、箱の絵のすぐ後にあります。
語り手の男性が、3枚も描いた羊の絵に文句ばかりを言われて、王子さまに箱の絵について言っている部分です。
「ça」
今回のキーワードである「ça」は、代名詞で、元は「cela」という単語の話し言葉バージョンです。
ということは、書き言葉では使われないはずなのですが…、実際にはかなり広範囲に使われているのが現状です。
SNSなどのメッセージやメールだけでなく、場合によっては権威ある新聞の記事でも登場することがあるぐらいなので、「ça」が話し言葉のみという建前は、すでに崩れてしまっているのかもしれません。
「cela」について
ここで「ça」の元の言葉である「cela」について確認しておきます。
意味は「あれ」「それ」であって、「これ」ではないという説明がよくありますが、実際はあまり距離に関係なく、「cela」が使われることが多いです。
「ça」には「cela」以外の意味もある
「ça」は「cela」の話し言葉バージョンではあるのですが、「cela」の「あれ」「それ」の意味を超えて、かなりいろいろな使い方をされます。
もちろん「あれ」「それ」が基本になってはいるのですが、指示するだけでなく、感情の起伏を表す場合があります。
「c’est」
「c’est」は第3回で詳しく説明しているので、要点だけまとめます。
- 意味は「これ(それ・あれ)は~です」。
- 「ce」と「est」の2つの単語で構成され、「ce + est = c’est」ということ。
- 「ce」は「これ(それ・あれ)」を意味し、「est」は英語の be動詞に相当。
「la」
「la」は、文法上、定冠詞の女性・単数です。
定冠詞は「特定できるあるもの」に使うのですが、このフレーズによって紹介されているのは絵の中の箱です。
つまり特定できるものなので、不定冠詞ではなく、定冠詞を使っているのです。
そして、次の「caisse」が女性形・単数なので、他の不定冠詞ではなく、「la」が使われています。
「caisse」
「caisse」は女性名詞で、「箱」や「ケース」の他に「金庫」「(スーパーなどの)レジ」それが転じて「基金」など、よく使うものだけでもいろいろな意味があります。
でも、このフレーズの中では「箱」もしくは「ケース」ですよね?
このフレーズでの「ça」は?
今回のキーワード「ça」という単語には、感情がこもる場合があるとお伝えしました。
感情の起伏にも、よい場合と悪い場合があるのですが、「ça」はどちらにも使われる可能性があります。
このフレーズは、砂漠のまんなかで故障した飛行機の修理がままならず、命の危険すらある中で、3枚も描いてあげた羊の絵が気に入ってもらえなかった語り手の男性が言ったセリフでした。
このセリフの直前に「(箱の絵を)なぐり書きして、投げた」とあるので、よほどイライラしていたのがわかります。
でも、王子さまは語り手の男性のイライラなど、全然気にしていない様子ですけどね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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