「chez」について
「chez」で始まる、今回のフレーズ。
この単語は、フランス料理のレストランの名前などに使われていて、フランス語学習にあまり興味がない人でも、見聞きしているのではないでしょうか?
「〇〇さんの家」「○○さん宅」という意味だと理解している方が多いと思いますが、それだけではありません。
このフレーズの場所と背景
単語に入る前に、今回扱うフレーズ「Chez moi c’est tout petit.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の中ほどで、前回のフレーズ、「Un boa c’est très dangereux, et un éléphant c’est très encombrant.」の直後にあります。
第2章には羊の挿絵が3枚も登場しますが、最初の羊の絵の少し前にあるのが、このフレーズです。
「chez」
冒頭でもお話ししましたが、「〇〇さんの家」という意味で知られているこの単語は、かなりいろいろな意味があります。
まず、「〇〇さんの家」「○○さん宅」と捉えると混乱してしまうのですが、この単語は文法上は前置詞なのです。
つまり、「chez」の後には、必ず何らかの単語がつくということです。
名まえを入れる場合は、姓・名のどちらも使えます。
姓なら敬称をつけるのが一般的です。
なお、「私」「あなた」などの人称代名詞の場合は強勢形になるのですが、これは本エピソードの中で、この後の単語「moi」のところでご説明します。
日本語にはないので、少しやっかいですが、代表的な意味と使い方をご紹介するので、感覚をつかんでいただきたいと思います。
①「~の家」
やはり代表的な意味で、「~」の部分には具体的な名前や人称代名詞などが入ります。
②職業の名前が入る場合
「chez(医者)」「chez(美容師)」「chez(パン屋)」などの形で、職業の名前を入れる場合があります。
この3つの例だと、「医者に行く」「美容院で髪を切る」「パン屋で朝食用のクロワッサンを買う」といった形で使います。
③国・地域など
「chez ~」の形で、国や地域などを表すこともあります。地域の場合は、例えば家が2~3軒の家といった、かなり小さい単位でも使えます。
④人の性格など
人の名前や代名詞などを入れて、性格や性質などを表すこともあります。
「彼にとって、それは習慣である」「赤ちゃんが泣くのは、彼らの仕事のようなものだ」のように使います。
「moi」
文法上は1人称代名詞の単数です。
意味は「私」ですが、同じ1人称代名詞単数の「je」の強勢形と言われる形です。
「chez」のところで、「私」「あなた」などの人称代名詞の場合は強勢形になるとご紹介しましたが、それがこの形です。
なので、「chez je」と言うことはできず、必ず「chez moi」の形になります。
「c’est」
「c’est」については、こちらで詳しく説明しています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です」です。
このフレーズでは、「chez moi(名詞)」+「c’est ~」の形になっています。
「tout」
「tout」は強調の「まったく」「非常に」「とても」を意味します。
「tout」にはいろいろな使い方があり、文法で言うと、形容詞・代名詞などもあるのですが、このフレーズでは後ろに形容詞の「petit」があるので、副詞です。
前回ご紹介した「très」とよく似ているのですが、このフレーズの「tout」を「très」に置き換えて「Chez moi c’est très petit.」にするのは不自然で、センスにも欠け、かなり残念な結果になってしまいます。
「petit」
フランス語の形容詞の中で、1番有名ではないかと思われる「petit」。
「小さい」「かわいい」「ちょっとした」などの意味です。
このフレーズでは「小さい」の意味でよさそうですが、「tout」によって、かなり強調されています。
フランス語で読める楽しさを味わおう!
このフレーズでの「chez moi」の意味は、このフレーズを言っている王子さまの「家」であり、「国」であり、「地域としての星」でもありますね。
和訳してしまうと、日本語での1人称を「私・ぼく・オレ」などの何にするのか、ということと同時に、「chez」を何として捉えるのか、という問題も出てきます。
なお、子どもである王子さまが言う「Chez moi c’est tout petit.」はかわいらしいのですが、このフレーズは大人が言っても不自然ではなく、例えばこんな場面で使われる可能性があります。
「私のアパートって、ホントに狭いんだけど、よかったら遊びに来てね!」
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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