王様の星にて
今回のフレーズのある第10章では、王子さまの星よりもさらに小さな星にいる王様が描かれています。
その小ささと言ったら、訪問者である王子さまがゆっくり座る場所もないほどです。
りっぱな玉座に座る、りっぱな衣装を着た王様ですが、本質を見抜いた王子さまには太刀打ちできません。
この王様は、何を意味しているのでしょうか?
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Tous les hommes sont des sujets.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の始めにあります。
第10章では、王子さまの星よりもさらに小さな星でのできごとが描かれます。
このフレーズは、王様が描かれている挿絵の少し後にあります。
「tous」
「tous」は「tout」の複数形です。
いろいろな使い方がありますが、今回は形容詞で「すべての」という意味です。
「tout」+ 定冠詞 + 名詞
今回のように、「tout」+ 定冠詞 + 名詞 という形で使われる場合の意味の違いについてご紹介します。
「pays(国)」という男性名詞で見てみると:
- tout le pays:「国じゅう」「国全体」
- tous les pays:「あらゆる国」「すべての国」
単数・複数の意味の違い
1は名詞が単数なので、「tout」と定冠詞も単数、1つの国の全体を表します。
2は名詞が複数なので、複数の「tous」になり、定冠詞も複数で、世界中またはアジアやヨーロッパなど、ある範囲にある国々全体を表します。
「les」
「les」は「ある特定のもの」を指すときに使われる、定冠詞の複数形です。
「hommes」
「hommes」は「人/人間」「男/男性」を意味する男性名詞「homme」の複数形です。
「人/人間」は動物ではない、「男/男性」は女性ではないという意味で使います。
ここでは「tous les hommes」の形で、「あらゆる人」「すべての人」を指します。
「sont」
「sont」は、英語の be動詞に相当する、être動詞の3人称複数の活用形です。
「des」
「des」にはまったく同じスペルの同音異義語があるので、両方をまとめます。
今回の「des」:不定冠詞の複数形
不定冠詞を整理しておきます。
- 「un」不定冠詞単数形男性
- 「une」不定冠詞単数形女性
- 「des」不定冠詞複数形
「de」と「les」の単語が合わさった「des」
つまり「de + les = des」ということです。
「de」は「~の~」という意味ですが、「A de B」だと「BのA」なので、日本語とは語順が逆になります。
「de」は前置詞、「les」は定冠詞の複数形です。
「sujets」
「sujets」は、男性名詞「sujet」の複数形です。
「sujet」は「主題」「テーマ」や「題材」の意味で使われることが多く、文法用語だと「主語」という意味にもなります。
ただし、ここでの「sujet」は少々特殊で、「(王様にとっての)臣下」という意味です。
戸惑った王子さま
今回のフレーズは、王様の始めのセリフの直後にあるのですが、王子さまのセリフではありません。
初めて会ったにもかかわらず、いきなり臣下呼ばわりされて戸惑った王子さま。
自分の星を離れて最初に着いたところだったので、この時の王子さまには世の中というものがわかっていませんでした。
その様子を上手にとらえたのが、語り手の男性の説明部分である、今回のフレーズです。
なぜ「des」が使われている?
このフレーズにある「des」は不定冠詞なのですが、なぜここで不定冠詞が使われているのでしょうか?
「des」の代わりに「ses(彼の)」と使って、「王様の臣下」と言ってもよさそうです。
でもこうしてしまうと、限定されてしまうのです。
「ある王様」に限ったことになってしまいます。
ここで不定冠詞を使うことにより、「(すべての)王様にとって、すべての人は臣下である」という、恐ろしく普遍的な意味を持つことになります。
王様は誰?
ここでの王様は、人を自分の命令に従わせることに懸命で、本来なら絶対であるべき命令も、都合よく変えてしまいます。
偉そうにしているのに、権威にしがみつくその姿は、大人の象徴として描かれています。
理想とは真逆のこっけいな様子を、短いフレーズで見事に表していますよね!
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