2つの「要らない」
今回のフレーズには「~することを必要とする」という表現が含まれています。
これは「~したい」「~を望む」という表現とはかなり異なるのですが、否定形になるとどちらも「要らない」という意味になる場合があります。
それぞれがどのようなニュアンスなのか、使い方の違いについてもご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je n’ai pas besoin d’habiter ici.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の後半にある王子さまのセリフです。
「je n’ai pas besoin d’habiter ici」
「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
否定の「ne(の省略形)」と「pas」によって、否定表現になっています。
「avoir besoin de +(動詞の原形)」という形で、「~することを必要とする」という意味です。
「d’habiter」は前置詞の「de」の省略形「d’」と「(人が)~に住む」という意味の動詞の原形「habiter」が合わさったもの、「ici」は「ここ」という意味です。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
王様は何にでも命令できるというので、王子さまは太陽に沈むように命じてほしいとお願いするのですが、結局は日没の時間まで待つことになるのだとわかります。
王子さまは退屈なのですぐにでも出発したいのですが、王様は引き留めようとします。
今回のフレーズは、いよいよ堪忍袋の緒が切れた王子さまが、王様に向かって強く言い返した部分です。
望まない→要らない
今回のタイトルは「もう1つの『要りません!』の言い方」にしたのですが、その理由はこのシリーズの第359回で「『要りません!』の言い方」というタイトルで配信しているからです。
この回でご紹介した「要りません」は、
- Je n’en veux pas.
(要りません)
でした。
「veux」は「~を望む」「~を欲する」という意味の「vouloir」の活用形(現在形)です。
なので「vouloir」を使った「要りません」は、対象になっている何かを望まないという意味です。
必要ない→要らない
それに対して、今回のフレーズにある「besoin」には「必要」「欲求」という意味があり、「avoir besoin」の形で「必要である」を意味します。
これを否定形にすることで
- Je n’ai pas besoin.
(要りません)
になります。
この「besoin」を使った「要りません」の場合、対象になっている何かを必要としないという意味です。
旅行先にて
同じ「要りません」でも、このようにニュアンスが異なるので、この2つを同時に使うことができます。
例えば、旅先でしつこい客引きにあったり、何かを売りつけられそうになったら、
- Je n’ai pas besoin. Je n’en veux pas.
のように、交互に繰り返すのです。
こうすることで「必要ないから、望まない」という意味の「要りません」になります。
大きな声でハッキリ言って、相手に自分の意思を伝えましょう!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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