感覚の違いを知ろう!
今回のフレーズはよく使われる慣用表現で、「お願いします」と和訳されることが多いと思います。
ただしフランス語本来の意味を知ると、日本語の「お願い」という感覚とはかなり異なります。
ニュアンスの違いを例文とともにご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Faites-moi plaisir…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の中ほどにある王子さまのセリフです。
「faites-moi plaisir」
「faites-moi」は「~を作る」「~をする」という意味の「faire」の命令形「faites」と「je(わたし)」の強勢形「moi」がハイフンでつながれたものです。
命令形に1人称や2人称の人称代名詞がつく場合には、ハイフンで強勢形をつなぐことになっています。
「(命令形)-moi」または「(命令形)-toi」ということですね。
「plaisir」は「喜び」「楽しみ」という意味の男性名詞です。
「faire plaisir à +(人)」で「(人)を喜ばせる」という意味になります。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
何にでも自分の命令が通用すると思っている王様は、星が命令に従うのかどうかを王子さまに質問されて「すぐに従う」と答えます。
なので、日が暮れるのを見るのが好きな王子さまは、それを王様にねだることにしました。
今回のフレーズは、王子さまがこのおねだりの直前に言ったものです。
本来の意味とは?
さて前述通り、このフレーズの「faites」は命令形で、「faire plaisir à +(人)」が「(人)を喜ばせる」という意味です。
「faites」はていねいな命令形なので、「~てください」に相当する表現です。
なので直訳すると「わたしを喜ばせてください」ということになります。
でも、これだけだと分かりにくいので、よく一緒に使われる言い回しをご紹介します。
- Faites-moi plaisir, venez avec nous.
(お願いですから一緒に来てください)
「venez avec nous」が「わたしたちと一緒に来てください」という意味であり、そのことによって「わたしを喜ばせる」ことができるのだと訴えています。
「venez」同様「faites」も、ていねいではありますが命令形で、依頼をしている表現です。
和訳するなら
とはいえ、「Faites-moi plaisir.」は話し手が自分の喜びを中心にしている点で、相手への配慮が欠けるように思われる一面があります。
そのため、日本語の「お願いします」のように謙虚なニュアンスというより、「自分のためにこれをしてほしい」という少し強引な依頼に聞こえます。
なので和訳するなら、謙虚なイメージが強く出る「お願いします」よりも、多少は強引さの出る「お願いだから」「お願いですから」や「頼むから」の方が、しっくりくる場合が多いと思います。
相手を思う図々しさ?
なお、「Faites-moi plaisir, venez avec nous.(お願いですから一緒に来てください)」という言い方は、本当によく使われます。
例えば、相手が自分は邪魔になるかもしれないと遠慮して、パーティーへの参加を渋っている場合などです。
そのパーティーには他に知り合いがいないから、自分は場違いだからなどの理由で、行かないと言っている相手に、「あなたが来ることが、わたしを喜ばせることにつながる」という気持ちを込めて、このように言うのです。
ともすると、図々しくて強引なお願いのように感じてしまいそうですが、相手を思いやっているからこそ、このように言っているんですよね!
そしてこれを言われた相手は、「そこまで言ってくれるのなら、行ってみようかな?」という気持ちになることも多いフレーズです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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