382 図々しいお願い? Faites-moi plaisir…

動詞

感覚の違いを知ろう!

今回のフレーズはよく使われる慣用表現で、「お願いします」と和訳されることが多いと思います。

ただしフランス語本来の意味を知ると、日本語の「お願い」という感覚とはかなり異なります。

ニュアンスの違いを例文とともにご紹介します。

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Faites-moi plaisir…」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第10章の中ほどにある王子さまのセリフです。 

「faites-moi plaisir」 

「faites-moi」は「~を作る」「~をする」という意味の「faire」の命令形「faites」と「je(わたし)」の強勢形「moi」がハイフンでつながれたものです。

命令形に1人称や2人称の人称代名詞がつく場合には、ハイフンで強勢形をつなぐことになっています。 

「(命令形)-moi」または「(命令形)-toi」ということですね。 

「plaisir」は「喜び」「楽しみ」という意味の男性名詞です。

「faire plaisir à +(人)」で「(人)を喜ばせる」という意味になります。

背景を見てみると 

旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。 

王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。 

何にでも自分の命令が通用すると思っている王様は、星が命令に従うのかどうかを王子さまに質問されて「すぐに従う」と答えます。

なので、日が暮れるのを見るのが好きな王子さまは、それを王様にねだることにしました。

今回のフレーズは、王子さまがこのおねだりの直前に言ったものです。

本来の意味とは?

さて前述通り、このフレーズの「faites」は命令形で、「faire plaisir à +(人)」が「(人)を喜ばせる」という意味です。

「faites」はていねいな命令形なので、「~てください」に相当する表現です。

なので直訳すると「わたしを喜ばせてください」ということになります。

でも、これだけだと分かりにくいので、よく一緒に使われる言い回しをご紹介します。

  • Faites-moi plaisir, venez avec nous.
    (お願いですから一緒に来てください)

「venez avec nous」が「わたしたちと一緒に来てください」という意味であり、そのことによって「わたしを喜ばせる」ことができるのだと訴えています。

「venez」同様「faites」も、ていねいではありますが命令形で、依頼をしている表現です。

和訳するなら

とはいえ、「Faites-moi plaisir.」は話し手が自分の喜びを中心にしている点で、相手への配慮が欠けるように思われる一面があります。

そのため、日本語の「お願いします」のように謙虚なニュアンスというより、「自分のためにこれをしてほしい」という少し強引な依頼に聞こえます。

なので和訳するなら、謙虚なイメージが強く出る「お願いします」よりも、多少は強引さの出る「お願いだから」「お願いですから」や「頼むから」の方が、しっくりくる場合が多いと思います。

相手を思う図々しさ?

なお、「Faites-moi plaisir, venez avec nous.(お願いですから一緒に来てください)」という言い方は、本当によく使われます。

例えば、相手が自分は邪魔になるかもしれないと遠慮して、パーティーへの参加を渋っている場合などです。

そのパーティーには他に知り合いがいないから、自分は場違いだからなどの理由で、行かないと言っている相手に、「あなたが来ることが、わたしを喜ばせることにつながる」という気持ちを込めて、このように言うのです。

ともすると、図々しくて強引なお願いのように感じてしまいそうですが、相手を思いやっているからこそ、このように言っているんですよね!

そしてこれを言われた相手は、「そこまで言ってくれるのなら、行ってみようかな?」という気持ちになることも多いフレーズです。

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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