375 王様のやさしさがわかるひと言とは? Allons ! bâille encore.

動詞

フランス語で感じよう!

今回のフレーズは王様のセリフですが、この王様はとても心優しい人です。

和訳すると同じ表現になってしまうものの、フランス語だとそれが実感できます。

王様のやさしさを、ぜひフランス語で感じてみてください!

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Allons ! bâille encore.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第10章の前半にある王様のセリフです。 

「allons ! bâille encore」 

「allons」は「行く」という意味の「aller」の命令形、「bâille」は「あくびをする」という意味の「bâiller」の命令形です。

「encore」は、「まだ」「相変わらず」「また」「もっと」などを意味します。

背景を見てみると 

旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。 

王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。 

でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。 

すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。

それに対して、王子さまは我慢できないと反論するのですが、「家来」に反論された王様はすぐに禁止したあくびを許します。

そして許すだけではなく、人があくびをするのを見たくなったらしく、今回のフレーズを言うのです。

3種類の命令形

前述通り、今回のフレーズには「allons」と「bâille」という、2つの命令形が使われています。

もちろん元の動詞は違いますが、それだけではなく、命令形の種類も異なります。

フランス語の命令形には3種類あるのですが、そのうちの2種類が使われているということです。

このシリーズの第282回で2種類の命令形を扱っているのですが、その中では「主語がない」こと、プラス「2人称の現在形」という2つの要素がカギになるとご紹介しています。

そして第3の命令形は第291回で扱っており、「主語がない」こと、プラス「1人称複数の現在形」という要素がカギです。

「allons」と「bâille」の形状

今回のフレーズの「allons」はこの3種類のうちの第3の命令形で、「1人称複数の現在形」の形をしています。

「bâille」は「2人称の現在形」のうちの1つで、2人称単数つまり「tu(君)」の現在形とほぼ同じです。

「ほぼ同じ」というのは、現在形から語尾の「s」を取った形だからです。

命令形「allons」と「bâille」の形をまとめると、次のようになります。

  • Nous allons à l’école.
    (わたしたちは学校に行く)
  • Tu bâilles.
    (君はあくびをする)

→ 現在形「bâilles」から語尾の「s」を取った「bâille

「allons」の意味

ところが「allons」には、「行く」や命令形の「行け」という意味はありません。

第3の命令形は「命令形」と呼ばれてはいますが、「~ましょう」という意味の勧誘表現なので、通常の「allons」なら、「行きましょう」という意味になります。

でも今回のフレーズの「allons」はさらに特殊で、「間投詞的な用法」と呼ばれる使い方です。

これは「aller(行く)」の命令形3種類に共通する使い方で、和訳するとすべて「ほら!」「さあ!」などになるものです。

なので今回のフレーズの「allons」も、和訳すれば「ほら!」「さあ!」になります。

「allons」以外の2種類

ちなみに、「aller(行く)」の命令形には「allons」以外にも「va」と「allez」があります。

前述通り「allons」は1人称複数の現在形、「va」と「allez」は2人称複数の現在形に基づく命令形です。

そのため「allons」は「行きましょう」、「va」は「行け」「行って」、「allez」は「行ってください」というのが基本的な意味です。

特殊な「allons」

ところが間投詞的な用法では、和訳すると「allons」「va」「allez」がすべて「ほら!」「さあ!」になります。

  • Allons, calme-toi.
    (さあ、落ち着いて)
  • Va, je te fais confiance.
    (ほら、君を信じてるよ)
  • Allez, dépêche-toi !
    (さあ、急いで!)

特殊な「allons」とその他の違い

和訳するとすべて「ほら!」「さあ!」になるものの、実は「allons」と「va」や「allez」には違いがあります。

元の命令形の意味「allons(行きましょう)」と、「va(行け/行って)」「allez(行ってください)」という違いが、間投詞的な用法になっても影響しているのです。

そもそも「allons(行きましょう)」という言い方は、命令というよりは勧誘なので、他の2つとは異なるのです。

心優しい王様

今回のフレーズは、王様が「Allons ! bâille encore.」と言っています。

和訳すれば「さあ!もっとあくびをしなさい」になるのですが、この王様はずっと1人ぼっちだったので、単に命令というものをしたいだけです。

それが表れているのが「Allons !」であり、前述通り「allons(行きましょう)」という勧誘が本来の使い方なので、同じ「さあ!」でも、そしてさらに「bâille」という命令形が使われていても、やわらかく聞こえるのです。

せっかくやって来た「家来」のご機嫌をうかがっているのは、心優しい王様の方ですよね!

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

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