活用を忘れちゃったの?
今回のフレーズには動詞が原形のままで使われています。
もちろん、活用させるのを忘れたわけではないですよ!
なぜ原形のままで使われているのか、同様の例も挙げながらご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の始めにあります。
第10章の挿絵から9行目にあるフレーズで、王様のセリフです。
「je n’ai vu personne bâiller」
「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
「vu」は「~を見る」「~が見える」などの意味の「voir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
ここでの「personne」には冠詞がついていないので、「人」という意味の女性名詞ではなく、代名詞です。
「ne(の省略形n’) ~ personne」の形で「誰も~ない」という意味になります。
なお代名詞の「personne」は、すでにこのシリーズの第322回で扱っています。
「bâiller」は「あくびをする」という意味の動詞の原形で、原形である理由は後述します。
「depuis des années」
「dupuis」は「~以来」「~前から」という意味です。
「des」は不定冠詞複数形、「années」は「年」という意味の「anné」の複数形「années」です。
「des années」で「何年も」の意味になります。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。
すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。
それに対して、王子さまは我慢できないと反論するのですが、「家来」に反論された王様はすぐに禁止したあくびを許し、今回のフレーズを言うのです。
原形のまま使われている理由
さて、このフレーズで「bâiller(あくびをする)」が原形のままで使われているのは、「voir(見る)」という感覚を表す動詞と一緒に使われているからです。
「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」という形です。
この動詞の原形部分は、見る」「聞く」などの感覚を表す動詞と一緒に使われることで、「どのような行動が行われていたのか」を説明しています。
具体例
この形がよく使われるのは、「~するのを見た」のように言う時です。
このうち「~するのを」に当たる部分を、動詞の原形で表します。
- J’ai vu un oiseau voler.
(鳥が飛ぶのを見た) - Il a vu Paul courir.
(彼はポールが走るのを見た)
名詞がない場合
「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」という形を見てきましたが、上記の2つの例は正確に言うと「感覚を表す動詞 + 名詞 + 動詞の原形」になっています。
名詞を入れずに「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」だけにすることも可能です。
その場合は「〇〇が」の部分がないので、抽象的な表現になることになります。
- J’ai vu danser.
(踊る姿を見た) - J’ai entendu pleurer.
(泣いているのが聞こえた)
→ 「entendu」は「entendre(聞こえる)」の過去分詞
今回のフレーズの意味
さて、今回のフレーズ「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」を見ていきます。
「je n’ai vu personne」の部分は過去表現で、「ne ~ personne」で「誰も~ない」なので、「私は誰も見なかった」になります。
「vu」についている動詞の原形「bâiller(あくびをする)」は、その前の「vu(voir=見るの過去分詞)」の行動を説明しています。
つまり「voir bâiller」は、「あくびをするのを見る」です。
「je n’ai vu personne bâiller」までで、「誰かがあくびをするのを見なかった」ということです。
そして残りの「depuis des années」が「何年も前から」になります。
このフレーズは過去表現ですが、「depuis des années(何年も前から)」がついているので、「何年も前から(ずっと)見ていない」という意味になります。
なのでこのフレーズ「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」は、「わたし(王様)は、何年も前から誰かがあくびをするのを見ていない」という意味です。
「personne」について
前述通り、このフレーズの「personne」には冠詞がなく、代名詞です。
「ne ~ personne」の形で「誰も~ない」という意味で使われることが多い代名詞ですが、ここでは同時に「bâiller(あくびをする)」という動詞の主体にもなっています。
「誰かが~するのを見ていない」という言い方はよく使われるので、このまま覚えてしまうと便利ですね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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