374 原形のままの動詞があるのはなぜ? Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.

動詞

活用を忘れちゃったの?

今回のフレーズには動詞が原形のままで使われています。

もちろん、活用させるのを忘れたわけではないですよ!

なぜ原形のままで使われているのか、同様の例も挙げながらご紹介します。

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第10章の始めにあります。 

第10章の挿絵から9行目にあるフレーズで、王様のセリフです。 

「je n’ai vu personne bâiller」 

「je」は「わたし」、「n’ai」は否定の「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。 

「vu」は「~を見る」「~が見える」などの意味の「voir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。

ここでの「personne」には冠詞がついていないので、「人」という意味の女性名詞ではなく、代名詞です。 

「ne(の省略形n’) ~ personne」の形で「誰も~ない」という意味になります。

なお代名詞の「personne」は、すでにこのシリーズの第322回で扱っています。

「bâiller」は「あくびをする」という意味の動詞の原形で、原形である理由は後述します。

「depuis des années」 

「dupuis」は「~以来」「~前から」という意味です。

「des」は不定冠詞複数形、「années」は「年」という意味の「anné」の複数形「années」です。

 「des années」で「何年も」の意味になります。

背景を見てみると 

旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。 

王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。 

でも長旅で疲れているのに、座る場所すらない王子さまは、王様の前であくびをしてしまいます。 

すると王様は、礼儀に反すると王子さまをたしなめ、あくびを禁止すると言います。

それに対して、王子さまは我慢できないと反論するのですが、「家来」に反論された王様はすぐに禁止したあくびを許し、今回のフレーズを言うのです。

原形のまま使われている理由

さて、このフレーズで「bâiller(あくびをする)」が原形のままで使われているのは、「voir(見る)」という感覚を表す動詞と一緒に使われているからです。

「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」という形です。

この動詞の原形部分は、見る」「聞く」などの感覚を表す動詞と一緒に使われることで、「どのような行動が行われていたのか」を説明しています。

具体例

この形がよく使われるのは、「~するのを見た」のように言う時です。

このうち「~するのを」に当たる部分を、動詞の原形で表します。

  • J’ai vu un oiseau voler.
    (鳥が飛ぶのを見た)
  • Il a vu Paul courir.
    (彼はポールが走るのを見た)

名詞がない場合

「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」という形を見てきましたが、上記の2つの例は正確に言うと「感覚を表す動詞 + 名詞 + 動詞の原形」になっています。

名詞を入れずに「感覚を表す動詞 + 動詞の原形」だけにすることも可能です。

その場合は「〇〇が」の部分がないので、抽象的な表現になることになります。

  • J’ai vu danser.
    (踊る姿を見た)
  • J’ai entendu pleurer.
    (泣いているのが聞こえた)

→ 「entendu」は「entendre(聞こえる)」の過去分詞

今回のフレーズの意味

さて、今回のフレーズ「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」を見ていきます。

「je n’ai vu personne」の部分は過去表現で、「ne ~ personne」で「誰も~ない」なので、「私は誰も見なかった」になります。

「vu」についている動詞の原形「bâiller(あくびをする)」は、その前の「vu(voir=見るの過去分詞)」の行動を説明しています。

つまり「voir bâiller」は、「あくびをするのを見る」です。

「je n’ai vu personne bâiller」までで、「誰かがあくびをするのを見なかった」ということです。

そして残りの「depuis des années」が「何年も前から」になります。

このフレーズは過去表現ですが、「depuis des années(何年も前から)」がついているので、「何年も前から(ずっと)見ていない」という意味になります。

なのでこのフレーズ「Je n’ai vu personne bâiller depuis des années.」は、「わたし(王様)は、何年も前から誰かがあくびをするのを見ていない」という意味です。

「personne」について

前述通り、このフレーズの「personne」には冠詞がなく、代名詞です。 

「ne ~ personne」の形で「誰も~ない」という意味で使われることが多い代名詞ですが、ここでは同時に「bâiller(あくびをする)」という動詞の主体にもなっています。

「誰かが~するのを見ていない」という言い方はよく使われるので、このまま覚えてしまうと便利ですね!

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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