361 王子さまのセリフを完成させよう! Mais le vent… Je suis une fleur. Mais les bêtes…

その他(王子さま)

同じ表現で完成させよう! 

今回は3つのフレーズを扱いますが、そのうちの2つは王子さまのセリフで、どちらも途切れています。 

簡単で、しかもまったく同じ表現を使って両方を完成できるので、ご紹介します。 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Mais le vent…」「Je suis une fleur.」「Mais les bêtes…」の場所と背景を確認しておきます。 

この3つのフレーズは、第9章後半の会話部分にある、王子さまとバラの花のセリフです。 

「mais le vent」「je suis une fleur」「mais les bêtes」 

「mais」は「しかし」「けれども」、「le」は定冠詞単数男性形、「vent」は「風」という意味の男性名詞です。 

「je」は「わたし」、「suis」は「être」の活用形(現在形)です。 

「une」は不定冠詞単数女性形、「fleur」は「花」という意味の女性名詞です。 

「les」は定冠詞複数形、「bêtes」は「動物」「けもの」「家畜」「(小さな)生物」「虫」という意味の女性名詞「bête」の複数形です。 

背景を見てみると 

旅立ちの朝、王子さまはバラの花に別れを告げました。 

わがままで見栄っ張りなバラの花は、時にはウソをついて自分のことを大きく見せようとしたりしていましたが、急に自分の気持ちを打ち明けて謝罪までします。 

そんなバラの花は、それまでいろいろな要求をしていたのですが、その中には自分を寒さから守ってくれる、ガラスの球状のカバーがありました。 

「もう(カバーは)要らない」と言うバラの花に、王子さまは戸惑い、心配しています。 

今回のフレーズの「Mais le vent…」と「Mais les bêtes…」は王子さまの、「Je suis une fleur.」は花のセリフです。 

「bête」 

「Mais le vent…」は「でも風が…」という意味ですが、「Mais les bêtes…」の「bête」には「動物」「けもの」「家畜」「(小さな)生物」「虫」というたくさんの意味があります。 

第8章では、花が「トラはちっとも怖くないけれど、風が大嫌い」と言っているフレーズがあり、このシリーズの第343回で扱っています。 

なので一見すると「動物」「けもの」の可能性も捨て切れませんが、今回のフレーズの後で、花が毛虫について言っているフレーズがあるので、ここでの「bêtes」はやはり「虫」です。 

王子さまは「でも風が…」「でも虫が…」と花のことを気遣っていますが、花は気丈に振る舞って、風も虫も問題ないと言い返しています。 

どう補う? 

さて冒頭で触れた通り、王子さまの2つのセリフの「…」部分を補ってみます。 

どちらも王子さまが花のことを気遣って、「Mais le vent…(でも風が…)」「Mais les bêtes…(でも虫が…)」と言っているので、「それが君を困らせたりしないかな?」を続ければ、フレーズが完成します。 

動詞は「embêter(うんざりさせる/困らせる)」を未来表現にして、「aller embêter」を使います。

主語「それが」は「cela」の口語形「ça」を使うので、「aller」は現在形の「va」になります。

「困らせたりしないかな?」の部分は否定形になります。 

  • Ça va pas t’embêter ?
    (君を困らせたりしないかな?) 

なお、本来なら否定は「ne ~ pas」にしますが、口語のくだけた表現なので、「ne」は省略します。 

また、「te(君を)」の部分が省略形の「t’」になっているのは、次の「embêter」が母音から始まっているためです。 

王子さまが言いたかったこと 

つまり王子さまの2つのフレーズ「Mais le vent…(でも風が…)」「Mais les bêtes…(でも虫が…)」を補うと、次のようになります。 

  • Mais le vent… ça va pas t’embêter ?
    (でも風が…君を困らせたりしないかな?)
     
  • Mais les bêtes… ça va pas t’embêter ?
    (でも虫が…君を困らせたりしないかな?) 

2種類の「風」 

ちなみに「トラはちっとも怖くないけれど、風が大嫌い」と言っている第8章の場面(第343回)では、「気流」「すきま風」などを意味する「courant d’air」という言葉を使っていました。 

今回のフレーズでは「(気象や自然現象としての)風」である「vent」を使っています。 

第8章では、屋内のちょっとした空気の流れを指すことが一般的である「courant d’air」を使うことによって、バラの花がいかにか弱く繊細かを強調していました。 

今回のフレーズでは、自然現象であり、ともすれば強風にもなり得る「vent」を使い、王子さまが花のことを心配している様子を表しています。 

言うまでもないことですが、作者はしっかり2種類の「風」を使い分けています。 

この記事を音声で聞くなら

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました