相手の成長をも願う言葉
今回のフレーズは別れの挨拶なのですが、「お幸せに!」とはひと味違う、相手の幸福を願う気持ちが表されています。
少し古風で詩的な表現なので、日常会話で使われることは少ないものの、相手の成長をも願う気持ちが込められた、ステキな言葉ですよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Tâche d’être heureux.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは第9章後半の会話部分にある、バラの花のセリフです。
「tâche d’être heureux」
「tâche」は動詞「tâcher」の命令形です。
「tâcher de +(動詞の原形)」という形で「~するように努める」という意味になります。
「d’être」は前置詞「de」の省略形「d’」と「être」が合わさったものです。
「heureux」は「幸福な」「幸運な」「運がよい」などの意味の形容詞です。
女性形は「heureuse」になり、発音が変わります。
背景を見てみると
旅立ちの朝、王子さまはバラの花に別れを告げました。
わがままで見栄っ張りなバラの花は、始めのうちは何も言わずにせき込んで見せるだけでしたが、急に自分が愚かだったと認めます。
そして謝罪とともに、今回の別れの言葉を口にするのです。
「お幸せに!」との違い
前述通り、「tâcher de +(動詞の原形)」で「~するように努める」という意味なので、今回のフレーズ「Tâche d’être heureux.」を直訳すると「幸せになるように努めなさい」になります。
フランス語にも、ただ単に「お幸せに!」という言い方もあるのですが、ここでは「tâcher(努める)」が命令形で使われています。
その影響で、相手に対して温かく、幸せな状態でいることを促すニュアンスが感じられます。
「幸せになるために自ら努力しなさい」という意味合いが込められているのです。
つまり、幸せは自分から積極的に追い求めるものであるという考えが根底にあり、少し自己啓発的です。
これを言うことで、単に幸せを願っているだけではなく、相手にエールを送っているようなイメージがあります。
その他の例文
「Tâche d’être heureux.」を簡潔に和訳するなら、「幸せになってね!」になると思いますが、冒頭でも触れた通り、少し古風で詩的な表現なので、このまま使うことは少ないかもしれません。
「tâcher de ~(~するように努める)」という形は、どちらかと言うと次のような場面で使われます。
- Je vais tâcher de finir ce projet à temps.
(プロジェクトを期限内に終わらせるよう努める) - Tâche de rester calme !
(冷静でいるようにしなさい) - Ils tâchent de ne pas faire de bruit.
(彼らは音を立てないようにしている)
使う場合の注意点
なお、「Tâche d’être heureux.」という言い方には、注意点があります。
- 「tâche」は「tâcher」の親しい相手に対する命令形なので、その他の人や複数の人相手には「tâchez」にする必要がある。
- 「Tâche d’être heureux.」を女性に言う場合には、「Tâche d’être heureuse.」のように形容詞を女性形にする必要がある。
- 「tâche」→「tâchez」、「heureux」→「heureuse」とも、発音が変わる。
- なお、「tâcher(努める)」の他に「tacher(シミをつける)」という動詞もあります。「â(帽子つき)」と「a(帽子なし)」でかなり意味が変わります!
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