知ればカンタン!
今回のフレーズには「les」が2回含まれています。
「les」は定冠詞の複数形として使われることが多いのですが、3人称代名詞複数の直接目的の「les」も存在します。
この2種類を簡単に見分ける方法があるので、ご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il faut les regarder et les respirer.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは第8章の4枚目の挿絵から2段落目にある、王子さまのセリフです。
「il faut les regarder et les respirer」
「il」は形式上の主語で意味を持たない使い方、「faut」は動詞「falloir」の活用形(現在形)です。
「falloir」の使い方はほとんどが「il faut ~」の形です。
「il faut +(動詞の原形)」で「~しなければならない」「~するべき」という意味です。
「les」は後述、「regarder」は動詞の原形で「見る」「眺める」などの意味です。
「et」は「そして」、次の「les」も後述、「respirer」は動詞の原形で「息を吸う」「呼吸する」「吸い込む」「(においを)嗅ぐ」などの意味です。
背景を見てみると
遠く離れた地球の、それも人里離れた砂漠で、王子さまは自分の星に残してきた1輪のバラの花を思っています。
ある朝花開いたバラと出会い、王子さまはすぐにその美しさに夢中になりました。
ただし、わがままで見栄っ張りなバラに振り回されてしまった王子さまは、大好きなはずのバラを疑うようになり、苦しみます。
今回のフレーズは、バラへの対応の仕方を間違えたと後悔している王子さまが、語り手の男性を相手に「こうすべきだった」と振り返っている部分です。
ここでの「les」
さて前述通り、今回のフレーズには「les」が2つありますが、これは両方とも3人称代名詞複数の直接目的です。
つまり「彼らを」「彼女たちを」「それらを」という意味です。
背景にある通り、この場面での王子さまはバラとの付き合い方について話しています。
王子さまが対応を後悔しているのは、1輪のバラの花に対してですが、今回のフレーズの直前では「花の言うことなど決して聞くべきではない」と言っています。
その際の「花」は「les fleurs」で複数なのです。
王子さまは、始めのうちは星に1輪しかないバラの花について話しているのですが、「花の言うことなど決して聞くべきではない」と言うに至っては、対象がバラだけではなくなっています。
今回のフレーズの意味
ということは、今回のフレーズの「les」とは、「les fleurs」のことを指しています。
今回のフレーズ「Il faut les regarder et les respirer.」は、直訳すると「それらを見てにおいを嗅ぐべきだ」ということになります。
「花というものは、眺めたり香りを楽しむべきなのだ」ということですね。
「les」の見分け方
なお、どちらも「les」なのでややこしいのですが、「les fleurs」の「les」は定冠詞複数形です。
それは「les」の直後が名詞だからです。
そして今回のフレーズを見ると、「les」の後には動詞があります。
「les」の直後に動詞があれば、それは3人称代名詞複数の直接目的なのです。
語順ルールについて
では、なぜ「les」の直後に動詞があれば3人称代名詞複数の直接目的なのかというと、それはフランス語の語順には「目的語が代名詞になる場合は動詞の前に来る」というルールがあるからです。
「定冠詞は名詞の前に来る」というルールなので、整理すると:
- 「les」+(名詞):定冠詞複数
- 「les」+(動詞):3人称代名詞複数の直接目的
ということになります。
置き換えを止めると…
ちなみに、今回のフレーズ「Il faut les regarder et les respirer.」の目的語の「les」を代名詞で置き換えずに「les fleurs」のままにするなら、語順が変わります。
「Il faut regarder les fleurs et respirer les fleurs.」になります。
「les fleurs」の繰り返しになるので、もちろん普通はこのように言いません。
そしてくどいですが、この場合の「les」は名詞の前にあるので、定冠詞複数ですね!
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