あたたかな視線
今回は2つのフレーズを扱いますが、この2つは続いています。
王子さまのセリフを借りて、作者の大切な人のことが語られているような、そんな場面にあります。
そして、この2つのフレーズによって、作者の女性観さえもうかがえるのです。
80年前の『星の王子さま』発表当時は、LGBTQどころか、男女同権も叫ばれていませんでした。
それでも、作者のあたたかな視線をうれしく感じる女性は、私一人ではないのではないかと思います。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Les fleurs sont faibles.」と「Elles sont naïves.」の場所と背景を確認しておきます。
この2つのフレーズは、第7章の中ほどにあります。
第7章では、王子さまと語り手の男性の会話が続き、最後はバラの花の絵で終わっています。
今回の2つは、中ほどにあるセリフ「– Oh !」から数えて2行目にある、王子さまのセリフです。
「les」
「les」は「ある特定のもの」を指すときに使われる、定冠詞の複数形です。
定冠詞を整理しておきます。
- 「le」定冠詞単数形男性
- 「la」定冠詞単数形女性
- 「les」定冠詞複数形
複数になると、男女ともに同じ「les」を使います。
「fleurs」
「fleurs」は、「花」を意味する女性名詞「fleur」の複数形です。
「sont」
「sont」は、英語の be動詞に相当する、être動詞の3人称複数の活用形。
「彼ら」「彼女たち」などが主語になり、意味は「~です」に当たります。
「faibles」
「faibles」は、「faible」の複数形です。
「身体の弱い」「能力に乏しい」「気の弱い」を意味します。
今回のフレーズでは花のことなので、「か弱い」ほどの意味でしょうか?
「elles」
「elles」は3人称代名詞の女性・複数形です。
3人称代名詞を整理しておきます。
- 「il」3人称代名詞男性・単数
- 「ils」3人称代名詞男性・複数
- 「elle」3人称代名詞女性・単数
- 「elles」3人称代名詞女性・複数
「naïves」
「naïves」は、「素朴な」「純真な」「無邪気な」などを表す形容詞「naïf」の女性形複数です。
「i」に2つの点がついた「ï」に注意してください。
この「ï」があるために、発音が変わります。
変化の仕方は次の通りです。
- 男性形単数「naïf」
- 男性形複数「naïfs」
- 女性形単数「naïve」
- 女性形複数「naïves」
「ナイーブ」に注意!
日本語の「ナイーブ」は、もともとはフランス語由来の外来語です。
ただし日本語の「ナイーブ」は意味が変化していて、元のフランス語より多少ネガティブなニュアンスを含んでいます。
フランス語の「naïf/naïve」は、無邪気な子どもや純真な若者などの形容詞として使われることが多く、どちらかと言うとニュートラルな感じです。
今回のフレーズだと、「素朴」「純真」「無邪気」のどれにも当てはまりそうです。
ところが、日本語の「ナイーブ」は、「世間知らず」「現実的な視点に欠ける」など、批判的な意味合いを持つことも多い単語です。
「naïf/naïve」を「ナイーブ」として覚えてしまうと、ニュアンスの違いがあるので、注意してくださいね!
「彼女たち」とは?
冒頭で触れたとおり、この2つのフレーズは続いているので、「elles」は「les fleurs」のことですよね?
でも、この章の挿絵に描かれている花は1本だけです。
なぜ、花は複数形で語られているのでしょうか?
王子さまの大切なバラの花
『星の王子さま』のバラの花は、作者の妻がモデルと言われています。
今回の2つのフレーズのある第7章の後半で登場し、第8章で詳しく語られます。
挿絵に描かれているのは、この王子さまの大切な花なのですが、今回の2つのフレーズは、王子さまの花の登場以前にあります。
つまり、一般的な花なので、複数形になるのです。
王子さまの特別な花の場合は、単数形で語られます。
その部分は近日中にお話しする予定ですので、お楽しみに!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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