簡単で効果的な方法
今回のフレーズにある前置詞の「avec」は、辞書を引いてみると実にさまざまな意味や使い方が載っています。
でも、こうした意味を全部覚えるよりも、ずっと簡単で効果的な方法があります。
実際のフレーズとともに、考え方をご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Elles se croient terribles avec leurs épines…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第7章の前半にある王子さまのセリフです。
「elles se croient terribles avec leurs épines」
「elles」は「彼女たち」「それら」、ここでの「se」は再帰代名詞です。
「croient」は「~を本当だと思う」「~を信じる」という意味の「croire」の活用形(現在形)ですが、再帰代名詞の「se」を伴なう代名動詞としての使い方ですので、「自分を〜と思い込む」や「自分を〜だと思う」という意味になります。
再帰代名詞や代名動詞については、このシリーズの第140回に詳細があるので、よろしければ参照してください。
「terribles」は「恐ろしい」「恐怖を与える」「すさまじい」などの意味です。
「avec」は「~と一緒に」「~を持って」「~を使って」など、「leurs」は所有形容詞3人称複数で「彼らの」「彼女たちの」「それらの」、「épines」は「トゲ」という意味の女性名詞「épine」の複数形です。
背景を見てみると
生死にかかわる飛行機の修理にかかりきりの語り手の男性は、羊と花の関係という、大事とは思えない王子さまの質問に対して適当に答えてしまいます。
挙句の果てには「花のトゲなんて何の役にも立たないし、ただ単に意地悪なだけだ」と言い放ってしまいます。
それに対し王子さまは強く反発して、花はか弱くて(意地悪とは程遠い)無邪気だと主張します。
今回のフレーズは、こうした王子さまの主張の一部です。
ここでの「elles」「leurs」
まず、今回のフレーズの「elles」と「leurs」について、確認しておきます。
「elles」は3人称代名詞複数女性形ですが、それは背景にある通り「fleur(花)」という女性名詞が複数形になっているためです。
「leurs」は前述通り所有形容詞3人称複数形です。
「elles」を受けているので、具体的には「花たちの」、要するに「自分たちの」という意味になります。
なお所有形容詞については、このシリーズの第99回に詳細があります。
「avec」の意味
さて、先ほど「avec」の意味として「~と一緒に」「~を持って」「~を使って」など、とご紹介しました。
でも辞書を見てみると、この他にも「~がついた」「~と同時に」「~を相手に」「~に加えて」「~にもかかわらず」「~のために」「~があれば」などなど、たくさんあります。
おまけに、一見するとかなり意味に幅があるように思えるのです。
なので、「あ~!全部覚えなきゃ!」とため息が出てしまうかもしれません。
でも大丈夫!
「avec」の意味は「~と一緒に」「~とともに」だけを覚えてください。
「avec」の例文
ではここからは、いろいろな「avec」の例文を見てみます。
太字の部分が、辞書に載っているような「avec」の意味です。
なお、辞書で見るような意味に寄せたので、和訳に不自然なところがありますが、後ほど修正します。
- Je suis allé au cinéma avec mes amis.(友だちと一緒に映画に行った)
- Elle parle avec gentillesse.(彼女はやさしさを持って話す)
- Il écrit avec un stylo.(彼はペンを使って書く)
- Un livre avec une couverture rouge.(赤い表紙がついた本)
- Il étudie avec la musique.(彼は音楽と同時に勉強する)
- Avec ça, madame ?(マダム、これに加えて?)
- Il a fait ça avec l’intention de t’aider.(彼は君を助けるためにそれをした)
友だちと一緒に映画に行った
1の「Je suis allé au cinéma avec mes amis.(友だちと一緒に映画に行った)」は「~と一緒に」という意味そのままなので、特に注意点はありません。
優しさを持って話す
2の「Elle parle avec gentillesse.(彼女はやさしさを持って話す)」に関しては、「gentillesse(やさしさ)」「とともに」と捉えると、「やさしく話す」という意味だと分かります。
ペンを使って書く
3の「Il écrit avec un stylo.(彼はペンを使って書く)」は、やはり「stylo(ペン)」「とともに」と捉えることで「ペンで書く」「ペンを使って書く」ということになります。
赤い表紙がついた本
4の「Un livre avec une couverture rouge.(赤い表紙がついた本)」は「une couverture rouge(赤い表紙)」「と一緒」なので「赤い表紙の本」ということです。
音楽と同時に勉強する
5の「Il étudie avec la musique.(彼は音楽と同時に勉強する)」も「la musique(音楽)」「と一緒に」と考えれば「音楽を聞きながら勉強する」だとわかります。
これに加えて
6の「Avec ça, madame ?(マダム、これに加えて?)」は、対面販売の店員さんの決まり文句です。
お肉屋さんやお魚屋さんなどで「これをお願いします」と言って包装や計量をしてもらうと、店員さんが「他にも必要なものはありますか?」という意味で言うのが「Avec ça, madame ?」なのです。
もちろん、お客さんが男性なら「Avec ça, monsieur ?」になります。
この場合も「ça(これ)」「と一緒に」と捉えられます。
君を助けるために
7の「Il a fait ça avec l’intention de t’aider.(彼は君を助けるためにそれをした)」では、「l’intention de t’aider」の「l’intention」が「意向」「意図」、「de t’aider」は「君を助ける」という意味なので、「l’intention de t’aider(君を助ける意図)」ということになります。
つまり「avec l’intention de t’aider」は「君を助ける意図とともに」という意味なので、「君を助けるために」だとわかります。
フランス語らしさを感じよう!
こうして具体的な例文をいくつも見てみると、前後の文脈から考えれば、「avec」自体は「~と一緒に」「~とともに」と捉えられます。
「avec」のいろいろな使い方を見ることで、フランス語らしい言い回しも感じられたのではないでしょうか?
辞書の内容を丸暗記するよりも、ラクで使いやすくなりますよね!
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント