フランス語は細かい?
今回のキーワードは所有形容詞の「ses」です。
形容詞なので、修飾する名詞の性や数によって変化するのですが、意外と単純です。
一般的には細かくて面倒だと思われるフランス語ですが、実は英語よりシンプルな場合もあるんです!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il la perfore de ses racines.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の中ほどにあります。
第5章2枚目の挿絵の直前にある段落の終わりの方にあるフレーズで、語り手の男性の説明部分です。
「il la perfore de ses racines」
「il」は主語としての「彼」「それ」、「la」は目的語としての「彼女」「それ」、「perfore」は「(モノ・胃などに)穴をあける」という意味の「perforer」の活用形(現在形)です。
ここでの「de」は手段や道具を表し、「~で」「~を用いて」という意味です。
「ses」は所有形容詞で「彼らの」「彼女らの」「それらの」、「racines」は「(草木の)根」という意味の女性名詞「racine」の複数形です。
背景を見てみると
語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。
地上にいる私たちからは見えない、土の中に眠っている種には、よい植物のよい種と、悪い植物の悪い種があります。
王子さまの星には、恐ろしい種が存在しており、それはバオバブの種でした。
今回のフレーズでは、バオバブへの対処を怠った際の結果が語られています。
ここでの「il」
背景からわかる通り、今回のフレーズの主語である「il」とは、「le baobab(バオバブ)」のことです。
このフレーズの少し前で「un baobab(あるバオバブ)」について語っているので、それを受けて男性形単数の「il」になっています。
ここでの「la」
また、目的語としての「彼女」「それ」という意味の「la」とは、今回のフレーズの直前にある「planète(惑星)」を指しており、それが単数の女性名詞だからです。
ちなみに、同音異義語に定冠詞単数女性形の「la」がありますが、定冠詞なら直後に名詞が来るはずです。
ここでの「la」の直後には動詞が来ています。
「人称代名詞目的格は動詞の前に入れる」というルールがあるので、この「la」は目的語です。
代名詞にしないなら?
そのため、「la」を代名詞にせずに「planète(惑星)」のままにする場合は、語順が変わります。
「Il la perfore de ses racines.」から「Il perfore la planète de ses racines.」になるのです。
なお「la planète」の「la」は名詞の直前にあり、定冠詞です。
英語の主語と所有形容詞の関係
さて、先ほど「ses」について、所有形容詞で「彼らの」「彼女らの」「それらの」という意味だとご紹介しました。
便宜上こうしてしまったのですが、すみません、あまり正しくはないです。
というのもフランス語の所有形容詞は、英語のように主語に影響されないのです。
今回のフレーズの場合、主語の「il」を英語にすれば「he」になり、所有形容詞「ses」の部分は英訳すると「his」になります。
もしも今回のフレーズが「elle(彼女)」で始まったなら、英語の場合は「she」と「her」になりますね。
英語の場合は、主語の性別が変わったり、人ではなくモノになったりする度に、所有形容詞の形も変わります。
3人称単数の「ses」
でもフランス語の場合、主語が「il(彼)」「elle(彼女)」「on(人を表す人称代名詞)」のいずれでも、後ろに来る名詞が複数なら「ses」のままです。
単数の場合は、男性形なら「son」、女性形なら「sa」が基本で、主語の性が変わったからと言って変化はしません。
この場合、所有形容詞に影響を与えるのは、修飾する対象である名詞の性や数です。
ただし、フランス語が英語よりもシンプルなのは、主語が3人称の場合のみです。
1人称や2人称の場合は、名詞の性や数に影響されるフランス語の方が、細かく面倒な結果に!
ちなみに、このシリーズの第99回で所有形容詞をまとめているので、詳細はそちらをご覧ください。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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