265 「わかってるよね?」が大切! Or un baobab, si l’on s’y prend trop tard,

動詞

既知かどうかが大切

今回のキーワードは「s’y prendre」です。 

このシリーズの第103回で、フランス語は「既知かどうかが大切」というお話しをしていますが、「s’y prendre」は特に「お互いがわかっている」ことが前提として使われます。 

知らないと理解できない熟語なので、この機会に覚えましょう! 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Or un baobab, si l’on s’y prend trop tard,」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第5章の中ほどにあります。 

第5章2枚目の挿絵の直前にある段落にある長いフレーズの前半部分で、語り手の男性の説明部分です。 

「or un baobab, si l’on s’y prend trop tard」

「or」は「さて」「ところで」、「un」は不定冠詞単数男性形、「baobab」は男性名詞で「バオバブ」です。 

「si」は「もしも」、「l’on」は「人」を表す代名詞の「on」に音を整える目的で「l’」がついたものです。 

「s’y prend」は「取りかかる」という意味の「s’y prendre」の活用形(現在形)です。 

「trop」は「あまりに」「非常に」、「tard」は「遅く」という意味です。 

背景を見てみると

語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。 

地上にいる私たちからは見えない、土の中に眠っている種には、よい植物のよい種と、悪い植物の悪い種があります。 

時が来れば、種は目を覚まして地上に現れますが、それがよい植物なのか、悪い植物なのかによって、対処の仕方が違います。 

王子さまの星には、恐ろしい種が存在しており、それはバオバブの種でした。 

今回扱うのは、バオバブの恐ろしさが語られる長いフレーズの前半部分です。 

フレーズの全体もご紹介しておきます。 

「Or un baobab, si l’on s’y prend trop tard, on ne peut jamais plus s’en débarrasser.」 

「prendre」

さて、先ほどは「s’y prendre」の意味について「取りかかる」とだけご紹介しました。 

元になっている動詞「prendre」には多くの意味があり、覚えるよりも例文などで身につけていく方がラクな単語です。 

代表的な意味だけでも、こんなにあります: 

  • (モノを)手に取る・握る 
  • (モノを)身につける 
  • (人を)連れて行く 
  • (モノ・事柄を)手に入れる 
  • (モノを)買う 
  • (他人のモノを)奪う 
  • (食べ物を)食べる・(飲み物・薬を)飲む 

英語が得意な方は、「take とだいたい同じ」と考えればいいかもしれません。 

「se prendre」

でも「prendre」の意味からは、「s’y prendre」にたどり着けません。 

そもそもこの熟語の構成は、再帰代名詞の「se」の省略形「s’」と「そこに」「それに」を意味する「y」が合わさった「s’y」に「prendre」がついて代名動詞になっているというものです。 

「再帰代名詞」や「代名動詞」については、このシリーズで何度もご紹介しているので、詳細は第140回などを参照してください。 

「y」を含まない「se prendre」の意味は、「(モノが)取られる」「(人・動物が)捕らえられる」などです。 

「s’y prendre」

ここで、大変残念なお知らせがあります。 

「prendre」と「se prendre」について長くご紹介したので、もういい加減お腹がいっぱい状態かもしれませんが、「s’y prendre」の意味は、この2つとはかなり違います。 

「se prendre」に「そこに」「それに」を意味する「y」がついたのが「s’y prendre」であることは、すでにご説明しました。 

「s’y prendre」は「取りかかる」などと訳されることが多いのですが、その奥には「ある特定の問題に対してどのように対処するか」という「方法をとる」または「取り組む」という意味が隠れています。 

「y」には「それに」という意味があるので、ここでは「何か特定の事態や問題に対する方法や対処法を指している」と考えれば、少しは理解しやすいかもしれません。 

ここでの「s’y prendre」

つまり今回のフレーズにある「si l’on s’y prend trop tard」は、「もし(私たちが)それに対する対処を遅すぎる時に始めたら」という意味になります。 

実際に和訳するなら、「取りかかるのが遅すぎれば」という感じでしょうか? 

ただし「s’y prendre」と言える前提条件として、語り手の男性と聞き手である私たち読者の間に、共通の認識がなければなりません。 

それは、背景にあるように「種は目を覚まして地上に現れたものが、よい植物なのか、悪い植物なのかによって、対処の仕方が違う」ということ。 

これがわかっているからこそ、「s’y prendre」という言葉が使えるのです。 

「s’y prendre」の注意点 

「s’y prendre」を使うには、他にも注意することがあります。 

それは、主語によって「s’」の部分が変化するということです。 

「s’y prendre」を使った、他のフレーズでご紹介します。 

「子どもたちとの接し方を知らない」という内容で、主語を変えてみます。 

主語の順番は、単数の1~3人称、複数の1~3人称です。 

「s’y prendre」の例文

  1. Je ne sais pas m’y prendre avec les enfants.  
  2. Tu ne sais pas t’y prendre avec les enfants.  
  3. Il ne sait pas s’y prendre avec les enfants.  
  4. Nous ne savons pas nous y prendre avec les enfants.  
  5. Vous ne savez pas vous y prendre avec les enfants. 
  6. Ils ne savent pas s’y prendre avec les enfants. 

例文のポイント

「s’y」になっているのは、3人称である3番と6番だけです。 

4番と6番の「nous y」「vous y」の発音にも注意してください。 

単独では発音されない「s」が、「y」がつくことで発音されますが、「z」の音になります。 

なお、例文の内容としては、あらゆる人の共通認識として「子どもとの接し方には注意が必要である」というものがあるので、「s’y prendre」という言葉が使えるのです。 

「prendre」や「se prendre」だけを見てしまうと、子どもたちを「連れて行く」、もしくは「捕らえられる」などと誤解してしまうかもしれません。 

「s’y prendre」という熟語は、やはり知らないと混乱の元ですね! 

この記事を音声で聞くなら

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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