お得な動詞
今回のキーワードは「faut」です。
この動詞の活用形は1つの時制につき1つだけ。
よく使う表現なのに覚えることがほとんどなくて、お得感がありますよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il faut leur dire :」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の中ほどにあります。
第4章の3枚目の挿絵のすぐ後の段落にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。
「il faut leur dire」
ここでの「il」には「彼」や「それ」などの意味はなく、形式的な主語という役割だけを担っています。
「faut」は動詞「falloir」の活用形(現在形)です。
「falloir」の意味などについては、後述します。
「leur」は3人称代名詞複数形の間接目的で「彼らに」「彼女たちに」「それらに」という意味です。
「dire」は動詞の原形で、「言う」という意味です。
背景を見てみると
語り手の男性は、王子さまの星だと考える小惑星、B612の発見にまつわる話しから、大人たちの性質へと、話題がシフトしています。
大人たちは物事の本質を見ようとしないので、例えば新しい友だちについて話すなら、その人の年齢や体重、果ては父親の収入など、数字にしか興味がありません。
これは人に関することだけでなく、モノについても同じことです。
今回のフレーズの後には、大人たちに言うべきフレーズと、それに対する大人たちの反応が続きます。
「faut」
前述通り、この形は動詞の原形ではなく活用形なのですが、他の動詞には6つもあるのに、この動詞の活用形は1つの時制につき1つだけ。
なぜなら、主語になるのは意味を持たない代名詞の「il」だけだからです。
わずかな例外を除いて、常に「il faut ~」の形で使われます。
よく使われるのは次の3つです。
- 「il faut +(名詞)」なら「~が必要である」
- 「il faut +(動詞の原形)」なら「~しなければならない」
- 「il ne faut pas +(動詞の原形)」なら「~してはならない」
「il faut +(動詞の原形)」
今回のフレーズでは、「dire(言う)」が原形なので、「il faut +(動詞の原形)」の形になっており、「~しなければならない」という意味です。
なので、全体としては「彼らに言わなければならない」なのですが、「何を」言わなければいいのかは「:(コロン)」の後に示されています。
ここでの「leur」
ところで、「leur」は「彼らに」「彼女たちに」「それらに」という意味ですが、背景からわかる通り、この言葉が指しているのは「les grandes personnes(大人たち)」です。
この部分が代名詞になっているので、「人称代名詞の目的格は動詞の前に入れる」というルールにのっとり、「leur dire」の語順になっています。
代名詞にしないなら?
では、今回のフレーズ「Il faut leur dire :(彼らに言わなければならない)」の「leur(彼らに)」の部分を代名詞にせず、「les grandes personnes(大人たち)」のままにしたら、どうなるでしょうか?
「Il faut dire aux grandes personnes :(大人たちに言わなければならない)」になります。
ポイントは、「les grandes personnes」の定冠詞「les」が、「aux」になるということ。
「les grandes personnes(大人たち)」のままでは、「~に」に当たる前置詞「à」がないので入れる必要があり、さらに「à」と定冠詞「les」が合わさって変化するので、「aux」になるからです。
ちなみに、この部分を「マリーに」にするなら、「Il faut dire à Marie :」になります。
名まえに定冠詞はつかないので、「à」のままになるからです。
動詞部分はお得!
前置詞の部分は面倒ですが、肝心の動詞の部分は「il faut ~」のみ。
主語が決まっているので他に活用のしようがなく、活用表を見ても「falloir」の欄だけは、気持ちいいぐらいにスッカスカです。
そして1つ覚えてしまえば、義務を表す「~しなければならない」や、禁止を表す「~してはならない」などを言えるようになるので、使いまわせます。
ただしこの「il faut ~」、フランス人が嫌いな表現でもあります。
誰だって、義務や禁止ばかりされていたら、ウンザリしてしまいますからね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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