「彼彼」にする理由
今回のフレーズには「il lui」という部分があります。
直訳すると「彼彼」になってしまうのですが、なぜこんな使い方をするのでしょうか?
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Quand un astronome découvre l’une d’elles, il lui donne pour nom un numéro.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の始めにあります。
第4章の2段落目にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。
「quand un astronome découvre」
「quand」は疑問詞として使われる時は「いつ」という意味ですが、ここでは「?」がないので、接続詞としての使い方です。
その場合は「~する時に」「~するたびに」という意味になります。
「un」は不定冠詞単数男性形、「astronome」は男性名詞で「天文学者」という意味、「découvre」は「発見する」「見つけ出す」「覆いを取る」などの意味の「découvrir」の活用形(現在形)です。
「l’une d’elles」
「l’une」は定冠詞「le」または「la」の省略形「l’」と「une」が合わさった形です。
ここでの「une」は代名詞で、「1つ」「1人」という意味です。
「d’elles」は前置詞の「de」の省略形「d’」と3人称代名詞複数女性形の「elles」が合わさったものです。
「il lui donne」
「il」と「lui」はどちらも3人称代名詞単数男性形で「彼」「それ」という意味です。
この違いについては、後述します。
「donne」は「~を~に与える」「~を~にあげる」が代表的な意味の動詞「donner」の活用形(現在形)です。
「pour nom un numéro」
「pour」はいろいろな意味がありますが、「~のために」「~の理由で」「~にとっては」などが代表的です。
「nom」は男性名詞で「名」「姓」「名称」、「un」は不定冠詞単数男性形、「numéro」は男性名詞で「番号」「番地」などの意味です。
背景を見てみると
王子さまは語り手の男性の質問に答えませんが、そのやり取りの中で、男性は王子さまが他の惑星から来たことを知りました。
そして王子さまの星が小さいということもわかりましたが、その小ささは1軒の家よりわずかに大きいだけというレベルでした。
男性には地理の知識があり、このように小さい惑星があることも知っていました。
今回のフレーズでは、新しく発見された惑星の名称について説明しています。
「elles」とは?
第4章は、20世紀初頭に活躍した、ある天文学者の話しが中心になっています。
今回のフレーズはその前段階として、惑星の命名方法について述べています。
その中で複数の惑星を話題にしており、ここでの「elles」は惑星を指しています。
女性名詞複数形の「planètes」なので、3人称代名詞複数女性形の「elles」になっているのです。
「そのうちの1つ」という言い方
「elles」が複数の惑星なので、「l’une d’elles」は「惑星のうちの1つ」ということになります。
「l’une」が女性形になるのも、元はと言えば「planète」が女性名詞だからです。
そのため同じ「そのうちの1つ」という言い方でも、男性名詞の集まりの中のうちの1つなら、「l’une」ではなく「l’un」が使われます。
例えば「それらの本のうちの1冊」なら、「l’un de ces livres」になります。
「il」と「lui」の違い
さて「il」と「lui」が重ねて使われている理由の前に、まずはこの2つの違いについて確認します。
このシリーズでは、すでに第124回などでご紹介済みですが、同じ3人称代名詞単数男性形でも、「il」は主語になるもので、「lui」は間接目的になるものです。

日本語だとどちらも「彼」になり、それにつける助詞によって区別するので、単語の形まで変わるということには、慣れる必要があります。
それまでは、「il(彼は/が)」「lui(彼に)」という風に、助詞をつけて覚えるのも1つの方法です。
「il lui」の理由
ここまでわかれば、「il lui」になる理由は単純です。
それは、「目的語が代名詞になる場合は動詞の前に来る」というルールがあるからです。
今回のフレーズでは間接目的の「lui」になっていますが、このルールは「~を」と訳される直接目的にも適用されます。
「il」「lui」とは?
なお「il」と「lui」はそれぞれ、何なのでしょうか?
「il」は、新しい惑星を発見した「astronome(天文学者)」です。
「astronome(天文学者)」が男性名詞なので、「il」が使われます。
そして「lui」が指すのは、新しく発見された「planète(惑星)」です。
前述の通り「planète(惑星)」は女性名詞なので、直接目的(~を)なら区別されますが、間接目的(~に)の場合は男女とも「lui」になります。
整理すると…
少々ややこしいので、代名詞が何を指すのかなどを振り返りながら、今回のフレーズを整理します。
「Quand un astronome découvre l’une d’elles,」で、「天文学者が惑星(elles)のうちの1つ(une)を発見すると」
「il lui donne pour nom un numéro.」で、「その天文学者(il)は、新しく発見した惑星に(lui)名称として番号を与える」
ということになります。
ちなみに、この中で2回登場する惑星ですが、1回目の惑星は「数ある惑星」なので複数形、2回目の惑星は「新しく発見された惑星」なので単数形になっています。
日本語だと、必要ない限りは性や数にこだわらないので、とても面倒に感じますよね!
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