191 モノ扱いの羊? Le mouton que tu veux est dedans.

その他(王子さま)

フランス語での違い 

『星の王子さま』の第2章では、羊の絵のことが長く語られます。 

羊にこだわり続ける王子さまに対して、仕方がなく王子さまに付き合って羊の絵を描き続ける男性という構図です。 

その様子は、和訳してしまうとあまり伝わって来ませんが、フランス語で読むと違いがわかる部分があるのです。 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Le mouton que tu veux est dedans.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第2章の終わりの方にあります。 

4枚目の挿絵から2行目の会話部分にあり、語り手の男性のセリフです。 

「le mouton que tu veux」 

「le」は定冠詞単数男性形「mouton」は「羊」を意味する男性名詞です。 

ここでの「que」は関係代名詞です。 

「tu」は2人称代名詞単数で「きみ」、「veux」は動詞「vouloir」の活用形です。 

人が主語で、「~を望む」「~を欲する」という意味です。 

「est dedans」 

「est」は「être」の活用形、「dedans」は「その中に」「家の中に」という意味です。 

「dedans」はもともと、前置詞の「de」と「dans(~の中に)」が合わさってできた言葉です。 

背景を見てみると 

語り手の男性は一刻も早く飛行機の修理をしなければならないにもかかわらず、羊の絵を3枚も描きましたが、王子さまはどれも気に入りません。 

王子さまに言わせれば、病気だったり、年寄りだったり、挙句の果てには羊ですらないのですから、ダメ出しを繰り返すことになりました。 

それでも故障した飛行機を前に、男性は悠長に絵を描き続けるわけにはいきません。 

とうとう堪忍袋の緒が切れた男性は4枚目をなぐり描きして王子さまに渡し、「それは箱だ」と言った後に、今回のフレーズでその絵の説明をするのです。 

なおこの直前にあり、「それは箱だ」という意味のフレーズについては、このシリーズの第9回でご紹介しています。 

フレーズの主要部分について 

先ほど単語をご紹介した際、今回のフレーズを「le mouton que tu veux」と「est dedans」の2つに分けましたよね? 

このフレーズは短いので2つだけにしましたが、本来なら「le mouton」と「que tu veux」と「est dedans」の3つにしたいところでした。 

なぜなら、「que tu veux」の部分は関係代名詞の節(小さなフレーズ)になっているからです。 

つまり、今回のフレーズの主要部分は「Le mouton est dedans(羊は中だ)」ということです。 

注意深く読むと… 

そして「le mouton(羊)」のことを説明しているのは、関係代名詞の節である「que tu veux(きみが欲しい)」なのですが、このお話しをフランス語で注意深く読んでいると、ここであることに気がつきます。 

それは、王子さまの羊に対する扱いと、語り手の男性の扱いには、かなり温度差があるということです。 

王子さまのセリフ 

このシリーズの第190回では、羊に関する王子さまのセリフ、「Je veux un mouton qui vive longtemps.」を扱ったのですが、その中でも羊について語る際に、関係代名詞が使われています。 

王子さまは、人を表す関係代名詞「qui」を使っているのです。 

男性のセリフ 

それに対し、今回のフレーズである語り手の男性のセリフは、「Le mouton que tu veux est dedans.」です。 

同じく羊に対して関係代名詞を使っているのですが、それはモノやコトを表す「que」なのです。 

王子さまは3枚目の羊が気に入らない理由として第190回のセリフを言い、男性は4枚目の絵の箱の中に羊がいるという意味で今回のフレーズを言ったので、厳密には同じ羊を指してはいません。 

それでも、王子さまと男性の羊に対する扱いは、かなり違うことが分かります。 

なぜ違う言い方に? 

王子さまは自分の星へ帰る時に連れていく相手、そして厄介者のバオバブの木を退治してくれる相棒として、羊のことを大切に思っているので、人を表す「qui」を使いました。 

でも、そういった状況をまったく知らない男性は、この時点では羊について思い入れなどもないので、モノやコトを表す「que」を使ったのです。 

ただし、多少は男性の肩を持ってあげても、いいような気はします。 

なにしろ、この時の男性は王子さまの星の状況など知らず、おまけに飛行機の修理を急がなければ、生きて帰れないという、切迫した事情もあったのですからね! 

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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