変化する指示代名詞
今回のキーワードは「celui」、指示代名詞の1つです。
指し示す言葉の性や数によって変化するので、まとめてご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Celui du boa fermé.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の中ほどにあります。
1枚目の挿絵の直前にある会話部分の前にある段落の2つ目にあるフレーズです。
「celui du boa fermé」
「celui」は指示代名詞の男性・単数形です。
前述の人やモノを指して、「この/その/あの人(モノ)」を表します。
「du」は前置詞「de」と定冠詞単数男性形の「le」が合わさったものです。
「boa」は男性名詞で「ボア(ヘビの種類の名前)」、「fermé」は形容詞で「閉じられた」「閉められた」の意味です。
「du boa fermé」で、「閉じられたボアヘビの」ということになります。
背景を見てみると
人里離れた砂漠で羊の絵をねだる王子さまに、語り手の男性は驚き、困惑しながらも、紙とペンを取り出しました。
男性は羊を描いたことがなかったので、唯一描き方がわかる2枚の絵のうちの1枚を描いて見せました。
今回のフレーズは、この絵の説明部分です。
描ける絵とは?
ここで言う男性が描ける絵とは、6歳の頃に書いたボアヘビの絵です。
最初に描いたのは、ボアヘビがゾウを丸ごと飲みこんだ様子を外側から見たものでした。
でも周囲の大人たちに「帽子」だと思われてしまったので、大人たちにもわかるように説明してあげる必要がありました。
そのために描いたのが、ボアヘビのおなかの内側を描いた2枚目の絵です。
男性は、1枚目の「帽子」と呼ばれた方を「閉じられたボアヘビの絵」、2枚目の内側の方を「開かれたボアヘビの絵」と呼んでいます。
対象は?
今回のフレーズ「Celui du boa fermé.」は、「閉じられたボアヘビのそれ」という意味ですが、背景から「celui(そのもの/それ)」が何なのかは、明らかですね。
今回のフレーズの前にある「dessin(絵)」を指しています。
先ほど「celui」は指示代名詞の男性・単数形であり、前述の人や物を指して、「この/その/あの人(もの)」を表すとご紹介しました。
ここでは「dessin(絵)」が男性名詞の単数形なので、「celui」が使われていますが、指し示す名詞の性や数が変われば、指示代名詞の形も変わります。
指示代名詞まとめ
このシリーズの第7回で、すでに「celui」を扱っているのですが、その際には指示代名詞の変化について、具体的にはご紹介しませんでした。
ここでは、4種類ある指示代名詞を表にしてまとめます。
男性 | 女性 | |
単数 | celui | celle |
複数 | ceux | celles |
「山の写真と海の写真」という場合、2つ目の「写真」の部分を指示代名詞にして「la photo de la montagne et celle de la mer」と言うことができます。
指し示す名詞「la photo」が女性名詞の単数形なので、「celle」になっています。
始めからは使えない
なお、指示代名詞はあくまでも「前述の人やモノを指す」言葉なので、始めから使うことはできません。
先ほどの「山の写真と海の写真」の例なら、「(山の)写真」の部分に指示代名詞は使えないということです。
距離は関係がない
また指示代名詞というと、どうしても「これ」「それ」「あれ」を連想しますが、フランス語で大切なのは、どちらかと言うと「すでに話題に上がった人やもの」ということであって、距離感は無視されてしまうことも多いです。
日本語は距離に敏感なので、つい区別をしたくなりますが、「celui」では距離を表しません。
このあたりにも、日本語とフランス語の視点の違いが表れていますよね!
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