間違いではない正解!?
今回も前回に引き続き、短いながらも一応、2つのフレーズです。
1つ目の「ah !」は、第10回でご紹介済みの間投詞ですが、2つ目のフレーズには初登場の「わたし」が!
このフレーズを知って、身近な単語を少々覚えるだけで、言えるようになる表現の幅が広がります。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Ah !」と「Je suis content.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の始めにあります。
第5章では、王子さまの星のやっかいもの、バオバブの木について語られます。
今回のフレーズは第5章の説明の後、語り手の男性と王子さまの会話が始まって4つ目からのフレーズです。
やっかいなバオバブ退治ができそうだと知り、王子さまが喜ぶ部分です。
「Ah !」
「ah !」は間投詞、「ああ!」で、喜びや驚きなどを表します。
ほかの間投詞とは違い、日本語に近い表現ではあるのですが、3回繰り返して使われることがあります。
日本語の間投詞などが繰り返されるのは、2回であることが多いと思いますが、「ah !」の場合は、なぜか3回なのです。
ここでは1回だけで、これが本来の使い方だと思います。
「je」
1人称代名詞単数、つまり「わたし」「僕」「オレ」などに当たります。
フランス語で「わたし」などの意味で主語として使われるのは「je」だけです。
第5回でご紹介済みの「moi」は「je」の強勢形なので、使われる範囲がかなり狭くなります。
フランス語の主語
日本語には「わたし」「僕」「オレ」の他にもいろいろありますが、こうした人称代名詞の種類が多いのは、世界中でも稀なんだとか。
そして主語を省略することが多いのも、日本語の特徴ですが、フランス語ではあまり省略しません。
もちろん、ずっと同じ主語ばかり続くことがないよう、表現を工夫するのが一般的です。
それでも、人によっては「わたし」「わたし」「わたし」…になるのを嫌う人がいて、省略できるところでは極力省いている文章も見かけます。
ただしその場合でも、主語に続く動詞の活用形などで主語がわかる場合に限られます。
…少々わかりにくいでしょうか?
次の単語で深掘りしますね!
「suis」
英語の be動詞に相当する、être動詞の1人称単数の活用形、というのが文法的な説明です。
つまり、意味は「~です」に当たり、この「suis」の主語になるのは、先ほどご紹介した「je」だけ、ということです。
「je suis ~」
この意味は「わたし(僕・オレ)は~です」。
「~」の部分に名詞を入れることで、いろいろな表現が作れます。
職業や出身地などを言えるので、自己紹介をするときには「je suis ~」を連呼することになります。
名まえを言う際には他の表現が知られていますが、「Je suis(名まえ)」で名乗る人も多いです。
主語の省略に一役
先ほど「suis」の主語になるのは「je」だけ、と言いましたが、主語を省略したがる人が利用するのは、こうした動詞などです。
主語が「je」1つに限られる動詞というのは、それほど種類が多いわけではないのですが、ひんぱんに使われる動詞が多く、「suis」はその代表格。
「Suis ~」にすれば、主語は「je」しかあり得ないので、省略できるという論理です。
なお主語の省略は、話し言葉より書き言葉で多く、書き言葉の中でも手紙などの正式な文書ではなく、個人的なメールやメッセージなどで多い印象です。
「content」
とてもよく使われる形容詞の「content」は、「満足している」「喜んでいる」という意味なのですが、直訳すると奇妙な感じがしてしまいます。
「余は満足じゃ!」なんて言う王さまが、日本にいたとしたら話しは別ですが、日本語で「私は満足している」や「私は喜んでいる」という言い方は、しないからです。
けれどフランス語では、本当によく使われます。
「Ah ! Je suis content.」
お話しの中の状況を考えて、王子さまが日本語で何と言うだろうかと想像してみると、「ああ、よかった!うれしいな!」という感じでしょうか。
この中でも「よかった」「うれしい」の2語になっている通り、「Je suis content.」というフレーズは、日本語だと1フレーズに納まらないように思います。
もっと言うと、「よかった」「うれしい」だけでも足りず、もうひと言、自分の機嫌のよさを付け加えられるような表現を足してしまいたいぐらいです。
そう、この時の王子さまは、ずっと抱えていた心配ごとが解消されて安心し、心の底から喜んでいる状態なんですよね!
だって、小さな星をおおい尽くしてしまいかねない、やっかいなバオバブが、羊に駆除してもらえることになったんですから!
ふだん使いの「Je suis content.」
本当によく使われる「Je suis content.」。
いろいろな意味があるので、正確に訳しづらい表現です。
ですので、使用例をご紹介します。
なお、女性が自分に使う時は「e」がついて「Je suis contente.」となり、発音も変わります。
ですので、男性バージョンと女性バージョンを1つずつご紹介します。
久しぶりのお天気で(男性バージョン)
このところ雨ばかり続いていたけれど、今朝は風もない快晴!
暑くも寒くもなく、本当に気持ちの良い1日のスタート!
「Ah ! Je suis content.」
うれしい出来事とともに(女性バージョン)
前から欲しかった、この夏にぴったりのワンピース。
バーゲン初日にお店に行ったら、私のサイズだけ残っていた!
まさかの50%オフで買えた!
「Ah ! Je suis contente.」
自分だけでなく相手にも
つまり「Je suis content.」という表現は、満足して喜んでおり、機嫌がよくて幸福そうな自分を表しています。
そして人間は誰しも、願わくばそういう状態の人と一緒にいたいと望むもの。
なので「content」という言葉は、相手に向けての疑問文でも、盛んに使われます。
「調子はどう?」などと聞くより、かなり踏み込んだ疑問文です。
ちなみに先ほど、女性が自分に使う時は「e」がついて「Je suis contente.」となり、発音も変わるとお伝えしましたが、女性相手の疑問文でも同様なので、注意してくださいね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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