指示語は対象を明確にしよう!
今回のキーワードは「là」です。
「ここ」を表す「ici」に対して使われる、「そこ」や「あそこ」を表す言葉なのですが、特定の場所を指し示さない場合もあります。
ただし、指示語であることには変わりないので、指し示している内容を理解していないと、誤解の原因になることもあります。
この単語が使われている文脈や状況をつかむ、練習をしておきたいですね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est là un bien grand mystère.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第27章の中ほどにあります。
第27章の6つ目の段落の最初にあるフレーズで、語り手の男性が思っていることです。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「là」
「là」は「そこ」「あそこ」を表します。
なお、「là」には「a」に右肩下がりのアクセントがついていて、定冠詞の「la」とは異なります。
「un bien grand mystère」
「un」は不定冠詞単数男性形です。
「bien」は副詞で、「よく」「正しく」「非常に」「本当に」などの意味です。
「grand」は形容詞で、「大きい」「背が高い」「重要な」「偉大な」などの意味です。
「petit」の対義語ですね。
「grand」は男性形で、女性形だと「grande」になります。
「mystère」は男性名詞で、「神秘」「不可思議」「謎」「秘密」などの意味です。
背景を見てみると
夜空の星のどこかには、王子さまが暮らしていると確信している語り手の男性は、星が鈴のように思っています。
ただし男性が描き足したくつわは、羊の口にはめることができないので、男性は羊が王子さまのバラを食べてしまわないかと心配しています。
男性はさまざまに想像を巡らせるのですが、ある時は肯定的になって幸せな気分を味わい、またある時は、否定的になってしまうので、鈴であったはずの星は、涙のしずくへと変化してしまうのです。
そして、今回のフレーズへとつながります。
なお今回のフレーズの直後には、「宇宙に同じものはひとつもなく、私たちが知らないところで、羊はバラの花を…」という意味のフレーズが続きます。
ここでの「là」
さて先ほど、「là」は「そこ」「あそこ」などという意味だとご紹介しましたが、「là」には、特に場所を指し示さない使い方もあります。
今回のフレーズの「là」は、どうでしょうか?
男性・王子さまとも、場所を移動しているわけではないので、場所を指しているわけではなさそうですよね?
ここで男性が問題にしているのは、肯定的になって幸せな気分を味わっていたかと思うと、一転して否定的になってしまう、心の動きのようです。
それこそが、「un bien grand mystère」だと言っているのですよね?
場所ではない「そこ」
今回の「là」が、特に場所を指し示さないということは分かりましたが、では、これを和訳するとしたら、どうでしょう?
普段私は、フランス語学習に和訳は必要ないと言っているのですが、今回は少し考えてみたいと思います。
なぜなら、日本語に、今回の「là」に相当する単語があるからです。
そのぴったり当てはまる単語というのは、「そこ」です。
つまり、場所を指し示す場合と同じ和訳になってしまうのです。
一度否定したのに、結局元に戻ってきてしまったような感覚ですが、日本語でも笑い転げた時などに、「そこなんだよ!そこ!」なんて言いますよね?
この場合の「そこ」は、特に場所を指し示しているわけではありません。
場所を指し示さない使い方の「là」の和訳が、常に「そこ」になるわけではないのですが、似たような表現になることもあるんですよね!
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント