実生活でも使われる
私には『星の王子さま』を読むにあたって克服できなかったことがありました。
でもこのシリーズを始めたことで、ようやく落ち着いてこの作品に向かい合えています。
今回の2つのフレーズは、このお話しの最後のクライマックス場面にありますが、実生活でも本当によく使われる表現です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Voilà…」と「C’est tout…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第26章の終わりにあります。
第26章の最後から3行前にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「voilà」
「voilà ~」は「こちらは(人)です。」「これは(物)です。」という意味です。
「~」の部分には人・物の両方を入れることができ、紹介や提示するときに使う言葉です。
ただし今回のように、単独で使われる場合は次のようになります。
- 仕事などを終えて:「はい、この通りです」
- 説明などを終えて:「以上です」
- モノを差し出して:「はい、どうぞ」
「c’est tout」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「tout」には形容詞・副詞・代名詞・名詞の4つの使い方があります。
詳細はこのシリーズの第62回を参照してください。
ここでは、今回のフレーズでの使い方、代名詞の部分をご紹介します。
代名詞の「tout」
- 単数の時の意味は「すべて」「全部」
- 名詞の代わりに入れる
- 複数の時の意味は「すべての人」「すべてのもの」
- 女性形単数はないので、単数は「tout」のみ
- 複数は性によって変化:「tous」「toutes」
- 代名詞の「tous」の「s」は発音する
代名詞の用例
- Tout est prêt.:すべて準備完了・単数
- Tous sont intelligents.:みんな賢い・複数
- C’est tout.:それだけです →今回のフレーズ
背景を見てみると
王子さまが1年前に地球にやって来た時には、空から落ちてきたので簡単でしたが、遠く離れた星に帰るとなると、話しは別。
泣くほど怖く、立っていられないほど足がすくんでしまうような、恐ろしい方法でしか、帰ることはできません。
それを知った語り手の男性さえ、立ち続けられずに座り込みました。
そして、男性にすべてを話し終わった王子さまは、今回の2つのフレーズを最後に、勇気を振り絞って立ち上がり、旅立つのです。
そう、今回の2つのフレーズが、王子さまの最後の言葉でした。
ありがとうございます!
今回の2つのフレーズで、第26章は一旦、終了します。
『星の王子さま』は第27章までありますが、第26章で王子さまが自分の星に帰ってしまうので、後は男性のひとり語りが少しあるだけです。
私は、翻訳版を含めれば中学生の頃から、この作品を数えきれないほど読んできていますが、この第26章と第27章を泣かずに読めるようになったのは、今回のポッドキャスト配信とブログ記事執筆のお陰です。
フランス語版でフランス語を勉強し始めた頃は、悲しい場面のフレーズを読むために辞書を引くのがイヤで、第25章までしか読まなかったほどです。
ここまでポッドキャスト配信を聞いてくださった方、ブログ記事を読んでくださった方がいらっしゃったからこそ、ここまで続けてこられました。
本当にありがとうございます!
次回からは第27章に入ります。
第27章は7回分を予定しており、それが終われば再度始めに戻り、ほんの少し難度を上げてお届けします。
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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