理想の女性像?
今回の2つのフレーズは、王子さまが自分の星に残してきた、バラの花について語っているものです。
このバラの花のモデルが作者の妻であることは有名ですが、とすると、この2つのフレーズの内容が、作者の理想の女性像なのかもしれません。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Et elle est tellement faible !」と「Et elle est tellement naïve.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第26章の終わりにあります。
第26章の3枚目の挿絵から2行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「et」
「et」は「そして」という意味です。
「elle est」
「elle」は3人称代名詞単数女性で、人なら「彼女」ですが、モノを指すこともあります。
モノを指すなら、女性名詞のモノになります。
「est」は、être動詞の活用形です。
「tellement」
「tellement」は「それほどまでに」という意味ですが、強調として「実に」「本当に」という意味でも使われます。
今回の2つのフレーズでは、両方とも強調として使われています。
「faible」
「faible」は、「身体の弱い」「能力に乏しい」「気の弱い」を表します。
ここでは花のことなので、「か弱い」ほどの意味です。
「naïve」
「naïve」は、「素朴な」「純真な」「無邪気な」などを表す形容詞「naïf」の女性形です。
「i」に2つの点がついた「ï」に注意してください。
この「ï」があるために、発音が変わります。
変化の仕方は次の通りです。
- 男性形単数「naïf」
- 男性形複数「naïfs」
- 女性形単数「naïve」
- 女性形複数「naïves」
なお日本語の「ナイーブ」は、フランス語の「naïve」に由来していますが、「世間知らず」「現実的な視点に欠ける」など、「naïve」にはない批判的なニュアンスを持つことが多くなっています。
元の「naïve」からは変化している点には、注意が必要です。
背景を見てみると
王子さまの旅立ちに際して、語り手の男性は何も言えなくなってしまったのですが、王子さまはひとりで話し続けます。
それでも、これから起こることが怖くて泣き、泣いて話しもできなくなり、ついには怖くて立っていることもできなくなって、一時座ります。
王子さまだって、語り手の男性に絵をねだったり、描いてもらった絵をけなして笑ったり、これまで見聞きしたことを話したりなどを、ずっとしていたかったに違いありません。
それでも自分の星に帰らなければいけないのは、大切なバラの花への責任を感じているから。
そして以前、花のことを話した時と同じ内容の今回の2つのフレーズを、また繰り返すのです。
誰かを守るということ
今回の2つのフレーズの直後に王子さまは、「バラの花は自分の身を守るためには何の役にも立たない、たった4つのトゲがあるだけなんだ…」と言っています。
冒頭でも触れたとおり、王子さまのバラの花のモデルが作者の妻だという話しは有名ですが、か弱くて純真・無邪気でありながら、「私にだってトゲっていうものがあるもの!」とでも言うような、強がりを言う女性だったのでは?
それにしても、泣くほど怖くて、立ってもいられないほど足がすくんでしまっているのに、それでも勇気を振り絞って星に帰るのは、ひとえにバラの花のため。
あなたには、そこまでして守りたい人がいますか?
また、そこまでして守ってくれる人はいますか?
「人の幸せって何だろう」と考えさせられる、2つのフレーズです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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