冠詞はいらない?
日本人の感覚からすると、なぜ冠詞というものが存在しているのか、と思うことがしばしばあります。
やはり母国語にないものは、ありがたみを感じにくいからです。
でも今回のフレーズには冠詞があるからこそ、他のものとの区別がしっかりつくのです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Ce n’est pas la peine…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第25章の始めの方にあります。
第25章の3行目にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「ce n’est pas」
「ce n’est pas」は、「c’est」の否定形です。
「n’est」は、「ne」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~ではない。」です。
「la peine」
「la」は、定冠詞の女性形単数です。
「peine」は女性名詞で、「罰」「精神的苦痛」「骨折り」「苦労」などという意味です。
背景を見てみると
王子さまと出会って8日目、語り手の男性の食料は尽き、飲み水もなくなったので、一緒に水を探すことになりました。
キツネの話しに触発された王子さまは、列車で忙しそうに行き来する様子を観察した、それまでの経験から、自分の感想を述べています。
人間たちは急いで行動しているが、急いでいる割には何を探しているのかもわかっていない状態だということを、男性に言うのです。
そしてその話しに付け加えたのが、今回のフレーズです。
「Ce n’est pas la peine」
実は「Ce n’est pas la peine」という言い方は定型句で、本当によく使われます。
「Ce n’est pas la peine」、または話し言葉で「C’est pas la peine」の形で、「必要ない」「いらない」という意味です。
また、「Ce n’est pas la peine de +(動詞の原形)」という形で、「~する必要はない」という意味になります。
「Ce n’est pas la peine de venir」なら、「来る必要はない」ということです。
「peine」の同音異義語
今回のフレーズにある「peine」は女性名詞で、「罰」「精神的苦痛」「骨折り」「苦労」などという意味ですが、「peine」という単語は、他にも存在します。
もう1つの方は副詞で、「à peine」の形で使われることが多く、「ほとんど~ない」または「~したばかり」という意味です。
まったく意味が異なるのですが、今回のフレーズのような名詞の場合は「la peine」と冠詞がつくので、すぐに見分けることができます。
やはり、冠詞は必要だったんですね!
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