幸福や豊かさとは?
今回のフレーズの対象は、おそらくは豊かに実っているだろうと思われる、小麦畑です。
人の幸福や人生の豊かさは、自分の外にあるのではなく、実は自分の心の中にあるということを、わかりやすく具体的に教えてくれている中の一節です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Et ça, c’est triste !」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第21章の前半にあります。
2枚目の挿絵から6行目から、いくつものフレーズが連なる段落があるのですが、その中のうちの1つで、キツネのセリフです。
「et」
「et」は「そして」という意味です。
「ça」
「ça」は代名詞で、本来は「あれ/それ」を意味する「cela」の話し言葉です。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être動詞の活用形「est」が合わさった形です。
意味は「これ(それ・あれ)は~です」。
「triste」
「triste」は形容詞で、「悲しんでいる」「さびしい」「悲しそうな」といった意味です。
「e」で終わる形容詞なので、男性形・女性形とも発音は同じです。
背景を見てみると
キツネは王子さまに、縁結びについて話しています。
退屈な日々の暮らしに飽きていたキツネは、始めは気乗りしない様子の王子さまに語りかけるのです。
今回のフレーズでキツネが「triste(悲しい・さびしい)」と言った対象は、遠くに見える小麦畑が、自分にとって何の意味も持たないこと。
肉食のキツネにとって、小麦は食べ物ではないので、意味も関心もないのは当然なのですが、キツネの言いたいのは、そこではないようです。
辛抱強いキツネ
ほんのしばらくの間だけ、一緒に遊んで気分を紛らわせたいだけの王子さまに、キツネは辛抱強く語りかけます。
生きる喜び、人生で大切なのは何なのかなどといった、人として本質的に必要なことを、わかりやすく具体的に話すのです。
キツネの観察
このキツネは、王子さまとの縁を結ぶことで、自分のつまらない日常を豊かにしたいと思っています。
砂漠に住んでいるにもかかわらず、キツネのそばには人間の暮らしもあるのですが、キツネの観察によると、人間たちにも暮らしを彩るような友人関係はありません。
小麦畑の色と音
でももし、キツネと王子さまの人間関係を構築することができれば、何も変わらないはずの小麦畑の色は、王子さまの髪の色をほうふつとさせ、相変わらず何の意味もないはずの、小麦の穂が風に揺られる時の音も、好きになるだろうと言っています。
友だちがどんなに遠く離れていても、自分の心の持ちようで、どのようにも豊かになれる。
人間として本質的に大事なことを王子さまに教え、そしてその教えをもとに、王子さまは大きく成長します。
教えてくれたのは、砂漠に住んでいる、耳の長い小さなキツネ。
それまで王子さまが出会ったような、偉ぶった王様やインテリらしい地理学者などではないのが、痛快ですね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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