原点となった体験
今回の記事は、「フランス語勉強法」とは言っても、フランス語には1ミリも触れません。
またフランス語に限らず、どの言語でも通用することですし、場合によっては、言語学習にはとどまらないかもしれません。
私自身の原点となった、ある体験についてのお話しです。
日本人女性講師との出会い
もうずいぶん前のことになりますが、ある日私は、とあるセミナーに参加していました。
フランスで、数百名のフランス人に混じって会場にいたのですが、講師の1人が日本人女性でした。
他の講師はフランス人ばかりだったので少々驚きましたが、堂々と登壇された様子を見て、単純に「すごいなあ」と思いました。
そこで改めて会場を見渡してみると、文字通り老若男女いろいろな人がいて、興味深そうに日本人講師の言葉を待っている風でした。
感心と喜び
講師の方は書類を持っていたのですが、彼女は原稿を読む風ではなく、受講者の顔を見ながら、自分の言葉で話していました。
もちろんフランス語で、です。
当時の私は、ようやくフランス語学習の入門期から脱しつつあるといったレベルだったので、同じ日本人が原稿を読まずに、数百人のフランス人相手にフランス語で話している姿を見て、もう本当に感心しきり、でした。
私自身は、彼女の話しに限らず、フランス語でのセミナーについていくのがやっと、という状態だったので、あまり余裕を持って周りの様子を観察することはできなかったのですが、誰もが「ふんふん」と納得して話しを聞いているのが伝わってきました。
同じ日本人として、なんだか嬉しかったのを覚えています。
2回のアクシデント
けれど、ちょっとしたアクシデントがありました。
彼女の話しの最中で、一部の聴衆が発音を聞き取れず、となりの人に聞き取れなかった部分をたずねるということが、会場のあちらこちらで起こったのです。
確かに、失礼ながら彼女の発音は、フランス語ネイティブにとっては聞きづらい部分があったと思います。
彼女がスピーチをしていたのは、おそらく20分ほどだったのですが、その間2回ほどは、会場がざわついてしまいました。
数秒ずつの体験
私が本当に驚いたのは、会場がざわついた際の、彼女の様子でした。
なんと彼女は、「あなたたち、どうしてこれがわからないの?」とでも言いたげな表情で聴衆を見回し、聴衆の理解が確認できた時点で、スピーチの続きを開始していました。
スピーチの中断は、おそらく2回とも、わずか数秒ずつだったと思うのですが、こうした対応は、なかなかできることではありません。
数百人のネイティブ相手にフランス語で、ほとんど原稿も見ずに話し、自分の発音がわからないせいで「今なんて言ってた?」などというヒソヒソ話しが聞こえてきたら、謝って言い直したりしてしまわないでしょうか?
謝るのはラクだから?
謝るというのは謙虚な心から来ているのかもしれませんが、日本にいる時とは違い、謝った方がいい場合と、そうではない場合がハッキリしていると感じます。
これはおそらくフランスに限ったことではなく、どちらかと言うと日本社会が特殊なのではないかと思います。
でも、そうした社会で育ってきているので、すぐに謝ってしまうクセがついているのですが、これはどうしても、マイナス思考につながるのです。
そして何でも謝り、自分の非を認めることでラクをしようとするようになってしまいます。
日本にいる時はそれでもいいのかもしれませんが、フランスでは通用しません。
勉強だけではないモノ
一聴衆として彼女の話しを聞き、周りの様子とともに彼女の態度を目撃した私は、本当に驚き感心しつつ、彼女の胆力や度胸を見た気がしました。
彼女の話しの内容からも、普段から研究を怠らずに努力しているらしいことが伝わってきましたが、それだけでは足りないのではないかと思ったのです。
海外でネイティブを相手に、彼らの母国語で話し、しかもたくさんの人に自分の言うことを理解して納得してもらうというのは、ただの勉強とはレベルが違います。
わずか数秒ずつ2回の、スピーチの中断を目撃したことで、私の覚悟が変わったような気がします。
すべての原点
そして数年後、私は意図せずに日本語教師になったのですが、気がつくと毎回、25人ほどのネイティブの学生たちを前に、やはり原稿を見ずにフランス語で説明している自分がいました。
数百人の聴衆と25人の学生という違いはあるものの、この仕事ができるようになった原点は、やはりあのセミナーでの体験があったと思います。
そして胆力を鍛えたことで、フランス語力はもちろんのこと、人とのコミュニケーションが変わり、自分自身の幸福感までもが変わりました。
その具体的な方法については次回に譲りますが、原点になったのは、やはりマイナス思考から脱皮できたことです。
今でも、あの日本人女性講師の方には、本当に感謝しています。
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