同じスペル・同じ発音の「droit」
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】の第31回で扱ったフレーズに「droit」という単語がありました。
その時はシンプルに「まっすぐ」という意味だとご紹介したのですが、実は「droit」には同音異義語があります。
しかも同じスペル、同じ発音で3種類あるうえ、名詞だと姓の違いで意味が変わったり、形容詞だと使い方で変わったり…。
私自身も混乱した経験があるので、ここでまとめてシェアします。
違いの見きわめ方もご紹介するので、よろしければ最後までお付き合いくださいね!
3種類の「droit」まとめ
ここからは1つずつまとめますが、何しろ同じスペル・同じ発音が3種類なので、番号をつけ、代表的な意味を加えて区別します。
①「まっすぐ」
- 形容詞・副詞・名詞になる
- 形容詞の女性形は「droite」
- 水平・垂直方向の両方で使われるので、「直線」「直立」の両方の意味
- 名詞の場合は女性名詞で「droite」、「直線」の意味
②「右」
- 形容詞・名詞になる
- 形容詞の女性形は「droite」
- 名詞の場合は女性名詞で「droite」
③「法」「権利」
- 名詞のみ
- 男性名詞
「法」と「権利」はすぐわかる
この3種類のうち、すぐに区別がつくのは③です。
名詞だけですし、他の2つと違って男性名詞なので、「le droit」などのように男性形の冠詞がついたりすれば③の「法」または「権利」です。
慣れるまでは名詞の性差など、本当にやっかいなのですが、今回のような同音異義語に出会った際には、ありがたい存在です。
混乱しやすい①と②
問題なのは①と②。
名詞・形容詞があり、名詞の場合は両方とも女性名詞なので、性差でわかるわけではありません。
前後にある別の単語を見たり、フレーズ全体の意味から判断するしかないのです。
そしてやっかいなのは、両方とも方向を表す単語だということ。
①は「まっすぐ」、②は「右」なので、場合によっては本当に混乱の元です。
かなり無謀なドライブ
以前からお話ししている通り、私はフランス語レベルほぼゼロでフランスに住むことになったのですが、かなりの田舎だったので、しばらくして車の運転を始めることになりました。
日本でも運転経験はありましたが、フランスは右側通行で左ハンドルの車に乗りますし、おまけにマニュアル車です。
幸いマニュアル車に対する恐怖感はなかったのですが、すべてが左右逆、案内や標識は当然ながらフランス語、場所もなじみがあるわけではありません。
今考えるとかなり無謀だったのですが、このようななか、フランス人にフランス語で道案内をされながら運転し始めたのでした。
「まっすぐ行って」と「右へ行って」の混乱
運転し始めた当時、私がかろうじて知っていたのは、「右」と「左」。
①の「まっすぐ」は知りませんでした。
助手席のフランス人は「まっすぐ行って」「右へ行って」「左へ行って」と指示してくれているようなのですが、左右はともかく、どうも「まっすぐ」がおかしいと気づきました。
そこで車を降りた後、「どうしていつも右って言うの?」と聞くと、身振り手振りで「まっすぐは droit」「右は droit」と教えてくれたのですが、余計にわからなくなりました。
「まっすぐ」と「右」の見分け方
当時はインターネットも携帯もない時代で、出先のため辞書もなかったのですが、後になって考えてみると、同音異義語でスペルも同じなら、混乱して当然です。
それでも何度か聞き返すうちに、ようやく区別の仕方がわかってきました。
「まっすぐ」と「右」を見分けるポイントは、「droit」自体の発音ではなく、前につく単語にあったのです。
ここでは、両方とも「行く」という意味の動詞の原形「aller」を使ってまとめます。
「まっすぐ」
- 「Aller tout droit」
- 「droit」の形で、終わりに「e」がつかない
「右」
- 「Aller à droite」
- 「droite」なので、発音が変わる
不便だったからこそ
先日、フランス人の友人と外出する機会がありました。
行先は少々わかりにくい場所でしたが、1度行ったことがあると言うので、友人の運転で出発したものの、途中で迷うことになりました。
そこで友人には運転に集中してもらい、助手席の私が携帯でGPSを確認しました。
私の携帯は日本語モードになっているので、GPSの音声も日本語です。
「GPSが日本語をしゃべってる!」と大笑いされながら、私がGPSの通訳をした結果、無事に目的地に到着しました。
私がフランスで運転を始めた当時に日本語のGPSがあったら、あの時のようなトラブルはなかったのですが、GPSがなかったからこそ、覚える努力もできたのでした。
少々大げさに言えば、命にかかわるので、けっこう必死でしたから!
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