意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第22回目は、「トーン」です。
日本語の「トーン」
日本語の「トーン」は英語由来の外来語です。
「トーン」は「音の高さ・音色」「色合い・色調」「話し方や文体の調子」を表す場面で使われます。
- トーン①「音の高さ・音色」
- トーン②「色合い・色調」
- トーン③「話し方や文体の調子」
フランス語の「ton」
前述通り、日本語の「トーン」は英語由来ですが、元をたどるとフランス語の「ton」に行きつきます。
つまりフランス語の「ton」が英語に入り、さらに日本語の「トーン」になったということです。
フランス語の「ton」にも、日本語の「トーン」の持つ「音の高さ・音色」「色合い・色調」「話し方や文体の調子」という意味がありますが、フランス語の「ton」は、それ以外にも「雰囲気・全体の調子」を表すときに使われます。
フランス語「ton」の使い方をまとめると、
- ton①「音の高さ・音色」
- ton②「色合い・色調」
- ton③「話し方や文体の調子」
- ton④「雰囲気・全体の調子」
ということになります。
いろいろな「ton」
「ton」の使用例を挙げておきます。
- Le ton de la soirée est très détendu.
(パーティーの雰囲気はとてもリラックスしている)
→ ton④「雰囲気・全体の調子」
- Le ton de la réunion est resté cordial.
(会議の雰囲気は友好的なままだった)
→ ton④「雰囲気・全体の調子」
- Ce roman a un ton mélancolique.
(この小説には物悲しい雰囲気がある)
→ ton④「雰囲気・全体の調子」
- Un ton clair et lumineux dans la peinture.
(絵画における明るい色調/トーン)
→ ton②「色合い・色調」
などがあります。
パーティーや会議の雰囲気、また「物悲しい雰囲気」という意味での「雰囲気」には「トーン」とは言いませんが、フランス語ではすべて「ton」です。
最後のフレーズの「明るい色調」は「明るいトーン」ということができますね。
「ton」の同音異義語
外来語「トーン」の語源になったのは名詞の「ton」ですが、フランス語には所有形容詞の「ton(君の)」があり、スペル・発音の両方が同じ、要するに同音異義語です。
所有形容詞の「ton(君の)」は男性形なので、男性名詞の前について「ton livre(君の本)」のように使います。
そして、今回扱った外来語「トーン」の語源になった「ton」も男性名詞なので、こんなフレーズになることがあります。
- J’aime bien ton ton.
(君の話し方の調子が好き)
→ ton③「話し方や文体の調子」
始めの「ton」は所有形容詞の「ton(君の)」、次の「ton」は男性名詞の「ton(話し方の調子)」なので、「ton ton(君の話し方の調子)」ということです。
この2つの「ton」は同音異義語でスペル・発音とも同じなのですが、実際に発音するときには名詞の「ton」、つまり2つ目の方が少し強調されます。
「tonton」の存在
なお、「tonton(おじちゃん)」という単語も存在します。
幼児語ではありますが、結構広く使われているので、先ほどの「君の話し方の調子が好き」というフレーズと、ほぼ同じフレーズになったりもします。
- J’aime bien ton ton.
(君の話し方の調子が好き)
- J’aime bien tonton.
(おじちゃんが好き)
「tonton(おじちゃん)」の方は1つの単語なので一気に発音、「ton ton(君の話し方の調子)」は若干の間をおいて2つ目の方を少し強調するのが、発音するときの注意点です。
それにしても「tonton(おじちゃん)」という単語は、どうしても「トントン」に聞こえてしまい、東京の上野動物園にいたパンダ「トントン」を思い出してしまうのは、私だけでしょうか?
「やんちゃな男の子」だと思われていたのに、実は「おてんばな女の子」だったパンダのトントン。
亡くなって、もう25年も経つそうなので、知らない方も多いかもしれません。
それでも、「tonton(おじちゃん)」の方はパンダみたいだけれど、「ton ton(君の話し方の調子)」は違う、と覚えてくださいね!
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