意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第21回目は、「ニュアンス」です。
日本語の「ニュアンス」
日本語の「ニュアンス」はフランス語から入った言葉です。
「ニュアンス」と言えば、「言葉・感情・表現の微妙な違い」を説明することばとして使われます。
- ニュアンス「言葉・感情・表現の微妙な違い」
フランス語の「nuance」
フランス語の「nuance」にも「言葉・感情の微妙な違い」といった意味がありますが、それは「nuance」ということばのごく限られた一部の意味にすぎません。
なぜなら、フランス語の「nuance」は、人の五感に加え、心の領域に使える、かなり汎用性のあることばだからです。
つまり、視覚的な微妙な差である「色合い・濃淡」、聴覚的な抑揚や音色の差である「音・声の抑揚・音色」、味覚や嗅覚のわずかな違いである「味・香り・風味」、そして心、つまり言葉や態度の機微である「言葉・感情・表現の微妙な違い」などのすべてを表すことばなのです。
フランス語の「nuance」の使い方をまとめると、
- nuance①「色合い・濃淡」
- nuance②「音・声の抑揚・音色」
- nuance③「味・香り・風味」
- nuance④「言葉・感情・表現の微妙な違い」
ということになります。
いろいろな「nuance」
「nuance」の例文を挙げておきます。
- J’aime les nuances du bleu dans la mer.
(海の青の濃淡が好きだ)
→ nuance①「色合い・濃淡」
- Elle a parlé avec une nuance de tristesse.
(彼女は悲しみを込めて話した)
→ nuance②「音・声の抑揚・音色」
- Ce café a des nuances de chocolat.
(このコーヒーにはチョコレートの風味がある)
→ nuance③「味・香り・風味」
- Son sourire a une nuance d’ironie.
(彼の微笑みには皮肉が込められている)
→ nuance④「言葉・感情・表現の微妙な違い」
などがあります。
「nuance」の意味の広がり
ところで、フランス語の「nuance」の語源となったのは、他の多くのフランス語の単語同様、ラテン語でした。
そのラテン語は「雲」を表す言葉だったのですが、現在のフランス語の「雲」は「nuage」なので、似てはいますが「nuance」とは別の単語です。
でも、「雲」の持つ「ぼんやりとした違い」というイメージが、「nuance」につながったようです。
前述通り、日本語の「ニュアンス」は心、つまり言葉や態度の機微である「言葉・感情・表現の微妙な違い」に限定された意味で使われます。
それに対しフランス語の「nuance」は、それにプラスして「人の五感」で感じる微妙な違いをも表すことばです。
ただし、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、「人の五感」は「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」の5つ。
先ほどご紹介した「nuance」の意味の中には、「触覚」が含まれていません。
というのも、触覚に関しては、「doux(やわらかい)」「lisse(なめらかな)」といった、質感を直接表す形容詞を使うことが多いので、「nuance」を使うことが極端に少ないのです。
それでも、ありとあらゆる場面で使われる「nuance」という表現には、慣れるまでに少々時間がかかった、というのがわたし自身の実感でした。
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