意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第20回目は、「モチーフ」です。
日本語の「モチーフ」
日本語の「モチーフ」はフランス語から入った言葉です。
「モチーフ」と言えば、芸術・文学・音楽の題材・主題などのことです。
- モチーフ「(芸術・文学・音楽の)題材・主題など」
フランス語の「motif」
フランス語の「motif」にも「(芸術・文学・音楽の)題材・主題」といった意味がありますが、それは「motif」という言葉のごく限られた一部の意味にすぎません。
「motif」の代表的な意味としては、まず「動機・理由」といったものが挙げられます。
それも日本語の「モチーフ」のイメージからは程遠く、「犯罪の動機」や「遅刻の理由」といった意味で使われるのです。
また、フランス語の「motif」は「(生地・壁紙・デザインなどの)模様・柄」という意味でも盛んに使われます。
フランス語の「motif」の使い方をまとめると、
- motif①「動機・理由」
- motif②「(生地・壁紙・デザインなどの)模様・柄」
- motif③「(芸術・文学・音楽の)題材・主題」
ということになります。
いろいろな「motif」
「motif」の例文を挙げておきます。
- La police cherche le motif du crime.
(警察は犯罪の動機を探している)
→ motif①「動機・理由」
- Quel est le motif de ton absence ?
(欠席の理由は何ですか?)
→ motif①「動機・理由」
- J’aime cette robe avec des motifs floraux.
(この花柄のワンピースが好きだ)
→ motif②「(生地・壁紙・デザインなどの)模様・柄」
- Le motif principal du poème est l’amour perdu.
(この詩の主題は失われた愛だ)
→ motif③「(芸術・文学・音楽の)題材・主題」
などがあります。
日本語の「モチーフ」と共通しているのは、最後のフレーズだけですね。
「motif」の意味の広がり
ところで、フランス語の「motif」の意味は「動機・理由」「(生地・壁紙・デザインなどの)模様・柄」「(芸術・文学・音楽の)題材・主題」なので、一見すると何のつながりもないように思えます。
でも、語源や意味の広がりをたどると、実は共通点があることがわかります。
「motif」の語源となったのは、他の多くのフランス語の単語同様、ラテン語でした。
その元の意味は「動き・動かすこと」というもので、それが「動機・きっかけ」になり、ここから「人を動かす理由」つまり「動機・理由」という最初の意味が生まれました。
「動かすもの」=「動機・理由」ですね。
そして時代は下り、「motif」は芸術分野で「ある形や線が繰り返し現れる要素」を指すようになります。
つまり「動かす理由」が「作品を作り出すきっかけ・要素」となり、「模様・柄」になったのです。
「動かす理由」→「形を生み出す元(模様・柄)」へと意味が広がりました。
またさらに、文学や音楽で「ある作品の中心的な要素・くり返し現れる主題」を「motif」と呼ぶようになりました。
これは「模様・柄」の比ゆ的な意味の広がりといえます。
「模様・柄」=くり返し現れる要素 → 詩や小説などの「くり返される題材・主題」への比ゆ的な拡張です。
要するに
- motif⓪「動き・うごかすこと」← 語源👇
- motif①「動機・理由」👇
- motif②「(生地・壁紙・デザインなどの)模様・柄」👇
- motif③「(芸術・文学・音楽の)題材・主題」
といった順番で意味が広がっていったのです。
語源や意味の広がりをもとに、この順番で覚えれば、バラバラに見えていた意味がつながってきます。
多少でも覚えやすくなれば、幸いです!
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