【フランス語のフレーズ】意味が狭まった外来語⑫タブレット

フレーズ

意味の広がりや違いを感じよう!

日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。

外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。

外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。

第12回目は、「タブレット」です。

日本語の「タブレット」

日本語で「タブレット」と言うと、現在はほぼコンピュータ用語の「タブレット端末」としてのみ、使われているのではないでしょうか?

ですが、タブレット端末が普及するよりもずっと前から、日本に「タブレット」という外来語は存在していました。

今はあまり使われなくなりましたが、「(薬やサプリメントなどの)錠剤」という意味で、です。

  • タブレット①「タブレット端末」
  • タブレット②「(薬やサプリメントなどの)錠剤」

フランス語の「tablette」

フランス語の「tablette」も、現在では「タブレット端末」という意味で盛んに使われてはいますが、日本語の「タブレット」ほどコンピュータ用語に限定された言葉ではありません。

それは「tablette」という言葉の成り立ちが関係しているのです。

というのも、「tablette」は「table(テーブル)」という単語に「-ette」という形がついてできた単語です。

「-ette」を語尾につけることで、元の単語を「小さくしたもの」や「かわいらしいもの」というニュアンスが加わるため、「tablette」の本来の意味は「小さな(ちょっとした)テーブル」です。

なお元来、「table(テーブル)」には「平らな面・台」という意味があるので、「tablette」も「小さい平らな板」や「板状のもの」という意味がついて回るのです。

その結果、「table」が作業や食事用の台であるのに対し、「tablette」は作業面としてではなく、モノを置いたり、収納したりするための小さな平らな面や板状のモノを指すようになりました。

具体的には、「小机や棚」「(家具などの)平らな面」「板状のモノ(食品や薬など)」などです。

フランス語の「tablette」の使い方をまとめると、

  • tablette①「小机や棚」
  • tablette②「(家具などの)平らな面」
  • tablette③「板状のモノ(食品や薬など)」
  • tablette④「タブレット端末」

ということになります。

日本語のタブレット②「(薬やサプリメントなどの)錠剤」は、フランス語のtablette③「板状のモノ(食品や薬など)」の一部と考えられますね。

いろいろな「tablette」

「tablette」の使用例を挙げておきます。

  • J’ai acheté une tablette de chocolat noir.
    (ビターの板チョコを買った)
    → tablette③「板状のモノ(食品や薬など)」
  • Il y a une tablette au-dessus du lavabo.
    (洗面台の上に小棚がある)
    → tablette①「小机や棚」
  • Prends deux tablettes de vitamine C par jour.
    (ビタミンCの錠剤を1日2つ飲んで)
    → tablette③「板状のモノ(食品や薬など)」
  • Mon fils joue à des jeux sur sa tablette.
    (息子はタブレット端末でゲームをしている)
    → tablette④「タブレット端末」
  • Elle pose ses plantes sur la tablette de la fenêtre.
    (彼女は窓台の上に植物を置く)
    → tablette②「(家具などの)平らな面」

などがあります。

ちなみに、最後のフレーズにある「tablette de la fenêtre(窓台)」とは、窓の下にある板状の部分のことです。

「出窓の内側に植物を置いている」というイメージですね。

フランスでの「タブレット端末」

なお日本語の「タブレット」と同じ意味である、コンピュータ用語としての「tablette」に関しては、少しおかしな現象が起きています。

本来「tablette」は「小さな板状のモノ」という意味で、フランス語から英語に入っていた単語でした。

それが近年、英語圏でコンピュータ用語として採用されて、「タブレット端末」という意味も持つようになりました。

「tablette」という言葉自体はフランス語由来ですが、英語圏で独自の意味を持つようになったわけです。

これをフランス語視点で見ると、「タブレット端末」というのは逆輸入された新しい使い方で、まるで英語由来の外来語のように捉えられています。

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