意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第11回目は、「パレット」です。
日本語の「パレット」
日本語の「パレット」には、大きく分けて2種類の意味があります。
1つは美術用語で、「絵の具をのせて混ぜるための板」というものです。
そしてもう1つは物流用語で、「モノを載せて運ぶための台」。
この2種類の意味が定着し、長く使われてきています。
近年になってから、コンピュータ用語として「コンピュータ画面上の色選択機能」という新しい意味が追加されましたが、この意味はあくまでもコンピュータという特定の領域に限られています。
- パレット①「絵の具をのせて混ぜるための板」
- パレット②「モノを載せて運ぶための台」
- パレット③「コンピュータ画面上の色選択機能」
フランス語の「palette」
フランス語の「palette」も、もとは「絵の具をのせて混ぜるための板」であり、「モノを載せて運ぶための台」でした。
ただしフランス語の「palette」では、「絵の具をのせて混ぜるための板」からの意味の広がりがありました。
単に絵の具の板というだけでなく、「色の組み合わせ・色調」を意味するようになったのです。
そしてこの意味の広がりは、色だけには留まらなくなり、「種類や選択肢の幅」や「技能や表現の幅」といった抽象的なものを表すようになりました。
つまりフランス語の「palette」は、「色 → 多様さ → 幅広い技能」という具合に意味が大きく広がったのです。
フランス語では、今もこうした抽象的な意味を含む広い用法が生きていて、日常会話でもよく使われる表現になっています。
フランス語の「palette」の使い方をまとめると、
- palette①「絵の具をのせて混ぜるための板」
- palette②「モノを載せて運ぶための台」
- palette③「色の組み合わせ・色調」
- palette④「種類や選択肢の幅」
- palette⑤「技能や表現の幅」
ということになります。
日本語のパレット③「コンピュータ画面上の色選択機能」は、フランス語のpalette④「種類や選択肢の幅」の一部と考えられますね。
いろいろな「palette」
「palette」の例文を挙げておきます。
- Le peintre tient sa palette.
(画家がパレットを持っている)
→ palette①「絵の具をのせて混ぜるための板」
- Une palette de couleurs vives.
(鮮やかな色の組み合わせ)
→ palette③「色の組み合わせ・色調」
- La boutique offre une large palette de thés.
(その店は幅広い種類のお茶を取り扱っている)
→ palette④「種類や選択肢の幅」
- Le peintre a une grande palette de styles.
(その画家は非常に幅広いスタイルを持っている)
→ palette⑤「技能や表現の幅」
- Cet acteur a une palette d’émotions impressionnante.
(この俳優は感情表現の幅が驚くほど広い)
→ palette⑤「技能や表現の幅」
- Les cartons sont empilés sur une palette.
(段ボール箱がパレットの上に積まれている)
→ palette②「モノを載せて運ぶための台」
などがあります。
2種類の「パレット」の由来
ところで、「絵の具をのせて混ぜるための板」と「モノを載せて運ぶための台」という、かなり異なる意味が「パレット」という言葉にはあり、それはフランス語の「palette」も同じです。
前述通り、フランス語では「絵の具をのせて混ぜるための板」の方からは意味が広がりましたが、「モノを載せて運ぶための台」の方はあくまでも物理的で、日本語と同じです。
けれど、こんなに意味の違う2つのモノが、なぜ同じ名前になったと思いますか?
それは、「palette」の本来の意味が「小さな平たい板」だからなのです。
小さな平たい板に絵の具をのせて使うようになったので「絵の具をのせて混ぜるための板」が「palette」と呼ばれるようになり、さらに、小さな平たい板を並べて物流に使うようになったので「モノを載せて運ぶための台」も「palette」と呼ぶようになったのです。
フランス語って、意外とシンプルな一面があるんですよね!
この記事を音声で聞くなら
この記事は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックで該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント