若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第12回目「prof」です。
「prof」とは?
「prof」は「professeur」の略で、日本語の「先生」の意味の一部や、大学などの「教授」を意味します。
「prof」は略語として定着しているので仏和辞書に載っていることも多いものの、そもそも「professeur」という単語を、辞書の説明通りに「先生」「教授」とだけ覚えてしまうと、誤解が生じかねません。
1つ目の「prof」
まず、「professeur」を「先生」という意味で使う場合を考えます。
「professeur」も「先生」同様、敬称として使われることが多いです。
ただし日本語の「先生」という言葉は教師だけでなく、医師や弁護士などかなりいろいろな人たちに対して使われます。
それに対し「professeur」と呼ばれるのは、中学校以上の教師たちです。
いわゆる「幼稚園の先生」や「小学校の先生」は「professeur」で呼ぶことはなく、男性に対しては「maître」、女性に対しては「maîtresse」という敬称が使われます。
もう1つの「prof」
大学などの教員も「professeur」と呼ばれ、「先生」という意味で使われることがよくありますが、大学教員に関しては、もう1つの意味も存在します。
それは称号としての「教授」という意味での「professeur」です。
つまり大学教員に関しては、教授・准教授・講師などがすべて「professeur」と呼ばれるのですが、称号としての「professeur(教授)」である人は、そのうちの一部だけだということです。
「prof」の使用例
さて、略語の「prof」の使用例としては、たとえば
「Il est mon prof de français.」
(彼は私のフランス語の先生だ)
のように言います。
「prof」という略語は定着しているものの、特に教授称号を持っているなど、権威を感じさせられる相手に使うのは控えたほうが無難かもしれません(人によりますが)。
この例文のように、目の前の相手に対してではなく、第三者に使うなら、まったく問題はありません。
1文字目が大文字に
なお先ほどご紹介した、幼稚園や小学校の先生という意味で使う「maître」という言葉ですが、弁護士や裁判官などにも使われる敬称です。
医師には「docteur」が敬称として使われます。
ちなみに、ここまで「professeur」「maître」「docteur」など、すべて小文字表記でご紹介してきましたが、敬称や称号として使われる場合には、1文字目が大文字になり、それぞれに略称が存在するので、まとめます。
略称 | 敬称 | 敬称の対象 |
Prof. | Professeur | 中学校以上の教師 |
Me | Maître | 教諭/弁護士など |
Dr. | Docteur | 医師など |
Pr. | Président | 会社社長など |
*会話では「prof」という表記ですが、略称の場合は「Prof.」と「.」がつきます。
特殊な単語「maîtresse」
ところで、幼稚園や小学校の「(女性の)先生」という意味で使われる「maîtresse」という言葉は、少々特殊です。
先ほど、弁護士や裁判官などにも「maître」が敬称として使われるとご紹介しましたが、女性の弁護士や裁判官なども「maître」と呼ばれ、「maîtresse」ではないのです。
理由としては、「maîtresse」という単語に「愛人」という意味があるからです。
男女同権はもちろん、LGBTQの時代に、単語の女性形のみ「愛人」という意味を持たせているのは、何とも時代錯誤で皮肉にすら感じてしまいますが…。
その一方で、まだ「愛人」という意味を知らないであろう子どもたちは、「maîtresse(先生)」と呼んでいます。
ただし、もう今は情報社会なので、特に小学校高学年の子どもたちが、「maîtresse」に「愛人」の意味があることを知らないはずはありません。
女性の弁護士や裁判官などと同様に、女性教師も「maître」と呼ばれるようになるのではないかと、個人的には考えています。
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