あり得ない洋食
スパゲッティ・ナポリタンは日本の洋食屋さんメニューで、イタリアには存在しません。
…という話しは有名になりましたが、これと同じように、フランス料理に似ているはずの日本の洋食が、現地ではあり得ない料理である場合があります。
好き嫌いのないフランス人の主人ですが、洋食メニューに関しては受け入れられないものもあり、試行錯誤を経て我が家の定番メニューが出来上がりました。
その過程で起こったことをご紹介します。
料理はしやすい環境
1990年代に、あまり予備知識もないままにフランスにやって来た私。
しかも始めから南フランスの田舎暮らしになったので、和食のレストランなどは近くにない環境でした。
それでも中華食材のお店やオーガニックのお店の片隅で、和食に必要なモノを買いそろえては、家で作っていました。
フランス人の主人は和食が大好きなうえ、納豆やイカの塩辛のようなクセのある食材もOKです。
果てはフランス人的にはあり得ない、クジラまでおもしろがって食べる人なので、私自身が食べたいものを作ることができる、恵まれた環境ではあります。
もっとも、必要な食材が存在すれば、という条件付きで(当然クジラはなしです)。
意外にも洋食で苦戦
なので「和食が恋しい」と強くは思わずに済んだのですが、日本で食べていたのは和食だけではなく、中華や洋食もあったわけです。
中華料理に関しては食材の調達もカンタンで、主人もおいしく食べてくれるので問題なかったのですが、厄介だったのは意外にも洋食でした。
好評だったメニュー
日本の洋食屋さんメニューのうち、私が最初に作ったのはカレーでしたが、これは主人にも大好評でした。
中華食材のお店に日本のカレールーが置いてあるので作るのも簡単なうえ、今でも家族全員の大好物メニューです。
そして豚のショウガ焼き。
こちらも大好評で、主人は自分でも作れるようになり、私がいない間でも、子どもたちに食べさせるようになるほどの定番メニューになりました。
日本では定番なのに…
ただし、この2つ以外の洋食メニューは苦戦続きでした。
カレーとショウガ焼きの次に作ったのは、私が日本でも作っていたのと同じレシピのハンバーグです。
これがダメだったのは、かなり意外でした。
フランスには牛肉と豚肉の合い挽き肉というものがないので、牛肉の挽き肉と豚のかたまり肉を買ってきて、豚の方は家にある機械で挽き肉にしました。
さらに日本風のパン粉もないので自分でパン粉を作り、タマネギをみじん切りにして…と、かなり苦労しました。
自分でも満足の出来栄えだったのですが、これこそ、主人が微妙な顔をして食べた料理の第1号になりました。
決してマズくはないそうですが、「どうしてハンバーグにいろいろなモノを入れるのかがわからない」と言うのです。
フランス式は?
というのも、フランス料理の「steak haché」は、文字通り「みじん切り状のステーキ」です。
牛のかたまり肉を機械で挽き肉にし、それをただ単に平たい楕円状にしたものを焼いて食べるのが「steak haché」なので、「牛肉100パーセントのハンバーグ」です。
ハンバーグに関しては、食べ慣れると私自身も「steak haché」のほうが美味しいと感じるようになり、手間もかからないので、家ではこれを食べるようになりました。
今や日本のハンバーグは、1人で日本に行った際に洋食屋さんで食べるぐらいです。
日本で作るより大変なのに…
そしてカキフライも、やはりダメでした。
これも日本で作るより、かなり大変です。
まずフランスには、カキのむき身は売っていないので、カラ付きのカキを買ってきて、自分で中身を取り出す必要があります。
また前述通りパン粉もないので、これも自分で用意します。
でもカキフライに関しては、作っている最中すでに、「これはダメだろうな」と思いました。
なぜならフランスのカキは、日本で加熱用として売っているカキよりも小さいのです。
おまけにカキ自体の味も薄く、自分で食べても残念な出来栄えでした。
なおこれは後で知ったことですが、日本で加熱用として売っているカキは大きく、味も濃くなるように、生食用とは養殖する場所なども違うのだそうです。
フランスではカキは生食する前提で売られているので、カキフライをフランスで作ること自体が無謀な挑戦だったようです。
子どもたちは大喜び
そして失敗はさらに続きます。
前述通り、日本のハンバーグは封印したので、メインは牛肉100パーセントの「steak haché」にしたのですが、ハンバーグの付け合わせ野菜の代表格とも言える、ニンジンのグラッセが食べたくなったのです。
作り方は至ってカンタン。
皮をむいて厚めに切ったニンジンをフライパンに入れ、少量のバター・砂糖・水を入れたらフタをして、弱めの中火でゆっくり加熱し、水が蒸発したら完成、というものです。
日本でかなりの回数作っていますし、そもそも「carotte glacée」というフランス料理なので、これを失敗した時には落ち込んでしまいました。
原因は、日本とフランスのニンジンの味の違いにありました。
一般的に日本で売っているニンジンより、フランスのモノは小ぶりでオレンジ色が強く、甘みが強いのです。
こうした違いを忘れて、日本で作っていた頃と同じように作ったグラッセは、お菓子のように甘くなってしまいました。
まだ小さかった子どもたちは大喜びで、主人も文句は言わずに食べてくれましたが、私自身がショックを受けました。
次回は、まさかのアレをご紹介します。
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