ナチュラルだけどリッチ?
あくまでも個人的な感想ですが、フランス語はナチュラルに、きらびやかでリッチな印象を与えられる言語だな、と感じることがあります。
今回のフレーズにはリッチな印象はないものの、作者の手法により、フランス語で読めばほとんどのネイティブと同じ感覚になるのではないでしょうか?
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est ainsi que j’ai abandonné, à l’âge de six ans, une magnifique carrière de peintre.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第1章の後半にあります。
3枚目の挿絵から2行目にあるフレーズです。
「c’est ainsi que」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
「ainsi」は「そのように」ですが、「c’est ainsi que ~」で、「こうして」「そのようにして」という意味になります。
「j’ai abandonné」
「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。
「abandonné」は「捨てる」「見捨てる」「放棄する」という意味の動詞「abandonner」の過去分詞です。
「à l’âge de six ans」
「à」は前置詞、「l’âge」は定冠詞単数の省略形「l’」と「年齢」を意味する「âge」が合わさったものです。
「six」は「(数字の)6」、「ans」は「(時間の単位としての~)年」「~歳」という意味の「an」の複数形です。
「à l’âge de ~ an(s)」で、「~歳で」という意味なので、「à l’âge de six ans」は「6歳で」ということです。
「une magnifique carrière de peintre」
ここからは、「j’ai abandonné(私は~を放棄した)」の内容が語られます。
「une」は不定冠詞単数女性形、「magnifique」は「すばらしい」「華やかな」「壮麗な」「豪華な」という意味の形容詞、「carrière」は女性名詞で「職業」「職歴」という意味です。
「peintre」は「画家」なので、「carrière de peintre」で「画家の職」「画家という職業」です。
これに「magnifique(すばらしい)」という形容詞がついているので、放棄した内容は「画家というすばらしい職業」ということですね。
背景を見てみると
6歳の時に読んだ本でインスピレーションを得た語り手の男性は、周囲の大人に自分の絵を見せて回りました。
でも、大人たちが作品を理解することはなく、誰もが、絵などやめて他の勉強をするようにと言うのでした。
今回のフレーズは、その結果がどうなったのかを説明している部分です。
かわいそうな少年!
今回のフレーズは、大人なら誰でも、多少は身につまされる内容です。
わずか6歳の少年の夢を、大人が寄ってたかってつぶしてしまったのですから、少年がかわいそうと感じる人が多いのではないでしょうか。
もちろん、「未来ある少年なのだから、食べていくのが大変な画家になるよりも、これで良かったのだ」というご意見もあるとは思います。
でもこのフレーズをフランス語で読むと、少年がかわいそうだと思う人が多いのではないかと思います。
オーバーな表現
というのも、実は今回のフレーズは、少し仰々しい表現になっているのです。
まず、「j’ai abandonné(私は~を放棄した)」と言っていますが、これは「やめた」と言えば済むところです。
そして「à l’âge de six ans」という部分は文末に置くのが自然なのに、わざわざ目立つように、カンマで区切りながらフレーズの中ほどに持って来ています。
その上、ただ単に「peintre(画家)」とは言わず、「une magnifique carrière(すばらしい職業)」と言っているのです。
特に「magnifique」という形容詞は「すばらしい」というだけでなく、「壮麗な」「豪華な」という意味もあるので、かなりゴテゴテというか、きらびやかな印象を与えます。
ネイティブ読者と共感しよう!
要するに作者が意図しているのは、「わずか6歳という幼い時期に、モノの本質を理解できない大人たちが寄ってたかって口をはさんだせいで、価値あるすばらしい職業である画家の道を断念することとなってしまった。大変に残念である」ということです。
今回のフレーズを、動詞を変えずに言い換えるなら、「J’ai abandonné d’être peintre à l’âge de six ans.(私は6歳で画家になることをあきらめた)」ですし、動詞を変えるなら、単に「やめた」と言う方が普通です。
このフレーズをフランス語で読み、作者の意図した通りに「少年がかわいそう」と感じたなら、おそらくは大多数のネイティブの読者と共感できたと思ってよさそうですね!
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