相手の幸せを願うひと言
今回のフレーズは、日常的によく使われる表現です。
私も人と話していて、おそらくしょっちゅう口にしているはずです。
でも、こうした何気ないひと言に、相手への気遣いが透けて見える瞬間があります。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「C’est mieux comme ça.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第26章の中ほどにあります。
第26章の1枚目と2枚目の挿絵のほぼ中間に、語り手の男性が「Bien sûr…(もちろん…)」と3回繰り返す場面があるのですが、3回目の「Bien sûr…(もちろん…)」の後にある段落の中のフレーズで、王子さまのセリフです。
「c’est mieux」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「mieux」は、「よりよい」「もっといい」という意味です。
「comme ça」
「comme」は、「~のように」「~のような」という意味です。
「ça」は代名詞で、本来は「あれ/それ」を意味する「cela」の話し言葉です。
背景を見てみると
王子さまは「目に見えない大事なモノ」の例として、大切なバラの花の話しをし、語り手の男性と2人で飲んだ井戸水の話しをしました。
かけがえのないバラがそこにあると思うから、星を見るたびに温かい気持ちになれるように、王子さまは男性に、自分と似たような状況を作ってあげようとしています。
ただし王子さまの星は小さすぎて、どれが自分の星なのかということは、男性に教えることができません。
でも、そのことを言った後に、王子さまは今回のフレーズを言うのです。
形容詞の「mieux」
ところで、今回のフレーズにある「mieux」は、「bien」という単語の比較級に当たります。
「bien」は、「よく」「正しく」「非常に」「本当に」などの意味の副詞として使われることが多いのですが、形容詞としても使われます。
「mieux」も同様に、副詞として使われることが多いのですが、今回は形容詞です。
けれど「bien」「mieux」とも、形容詞として使われる場合でも、女性形や複数形になるなどの変化はせず、いつも同じ形です。
「よい」「よりよい」
「mieux」は「bien」の比較級なので、今回のフレーズのレベル下げることができます。
今回のフレーズは「mieux(よりよい)」つまり比較級での表現ですが、このレベルを下げて単に「よい」にするなら、「C’est bien comme ça.(そういうのがいい)」になります。
「C’est mieux comme ça.」と「C’est bien comme ça.」どちらのフレーズも、日常的によく使われる表現です。
なぜ、わからないほうがいい?
背景で触れたように、王子さまが「C’est mieux comme ça.」と言ったのは、星が小さすぎて、どれが自分の星なのかということは、男性に教えることができないということでした。
それがなぜなのかは、今回のフレーズの後で、王子さまが説明しています。
自分の星がどれかがわからないこそ、男性にとってはたくさんある星の1つになり、男性は全ての星を見るのが好きになるから…。
子どもであるはずの王子さまですが、その内面はすでに、相手の幸せを願うステキな大人の男性ですよね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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