理由はいらない?
人を好きになるために、きっかけは必要かもしれませんが、理由などいらないのかもしれません。
それがよく表れているのが、今回のフレーズです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Puisque c’est ma rose.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第21章の終わりの方にあります。
第21章の終わりから10行前ぐらいまで、いくつものフレーズが連なる段落があるのですが、その段落の最後のフレーズで、王子さまのセリフです。
「puisque」
「puisque」は、「なのだから」「~である以上」を意味します。
「puisque」は、話し手・聞き手の両方が、すでに知っている情報をもとに理由を言う時に使います。
今回のフレーズでは、王子さまのバラの花のことは事前に何度も語られていて「すでに知っている情報」なので、「puisque」を使っています。
理由を言う時に使う表現には「parce que」もありますが、これを使うには、聞き手にとって新しい情報である必要があります。
そのため、今回のフレーズの「puisque」を「parce que」で置き換えるのは不自然です。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「ma rose」
「ma」は所有形容詞、1人称で単数の女性形です。
「私の」「僕の」「オレの」という意味です。
話し手の性別ではなく、後に来る名詞の性別によります。
「rose」は「バラ」を意味する女性名詞です。
「rose」が単数の女性名詞なので、「ma」になっています。
背景を見てみると
王子さまとキツネは、キツネが望んでいた通りの関係を築くことができました。
けれど、もうすぐ別れの時がやって来ます。
王子さまはキツネに勧められて、5000本はあろうかという、バラの花たちのもとを訪れます。
初めてこの大量のバラを見た時には悲しんでいた王子さまでしたが、人生の師匠とも言えるキツネの話しを聞き、その言葉によって短期間に成長した王子さま。
もう悲しむことはなく、バラの花たちにケンカを売っているかのように話しかけます。
今回のフレーズは、バラの花たちに語った、王子さまの最後のセリフです。
繰り返された「puisque」
今回のフレーズにある「puisque」は、先ほど「話し手・聞き手の両方が、すでに知っている情報をもとに理由を言う時に使う」とご紹介しました。
そして今回のフレーズは「いくつものフレーズが連なる段落の最後のフレーズ」であることもお伝えしましたね。
この段落は、王子さまが大量のバラの花たちに話しかけている内容です。
この中で王子さまは「puisque」を、なんと6回も使っており、6回目が今回のフレーズです。
人を好きになる理由
そして、その6つが何の理由かというと、自分のバラの花だけが、ほかのどの花よりも大切だということです。
6つの理由の内訳は、「自分が水やりをしたから」とか「風よけのためのついたてを立ててあげたから」とか「毛虫を退治してあげたから」などなど。
そして挙句の果て、最後の理由が今回のフレーズですからね…。
自分のバラの花は、大量のバラたちに姿かたちはそっくりだけど、君たち(大量のバラの花)は中身がからっぽで、君たちのために死ぬことなんてできない、とまで言うのですから、本当にケンカ腰です。
みんなきれいなのに、これではバラの花たちがかわいそうな気さえしてきます。
実際、人を好きになる理由なんて、案外単純なことだったりするんですよね!
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