七変化を超える「on」
今回のキーワードは「on」です。
人称代名詞なのですが、かなり特殊で、本当にいろいろな意味になる単語です。
ただし、コツを覚えてしまえば、これを使って話すことで、細かな文法を考えずに済ませるテクニックもあります。
一部をご紹介しますので、参考にしてくださいね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「On est un peu seul dans le désert…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第17章の中ほどにあります。
2枚目の挿絵より4行前の中にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「on est」
「on」は3人称代名詞単数で、主語としての「人」を表すのが、基本的な働きです。
特殊な人称代名詞で、「人」が誰を表すのかは、文脈によって変わります。
後述しますが、「私」「私たち」「あなた」「あなたたち」「彼/彼女」「彼/彼女たち」すべての意味になり得ます。
「est」は、être動詞の活用形です。
「un peu」
「un peu」の意味は「少し」「ちょっと」。
「un peu」にほかの単語を組み合わせたり、「peu」だけの使い方もあるのですが、「un peu」または「un peu + 形容詞」がよく使われます。
「seul」
「seul」は形容詞で、「唯一の」「ただ1人の」「ただ1つの」という意味です。
女性形は「seule」になりますが、発音は変わりません。
「dans le désert」
「dans」は、「~の中に」「~の中で」などの意味です。
基本的に「dans + 冠詞 + 名詞」の形で使われます。
「le」は、定冠詞男性・単数です。
「désert」は男性名詞で、「砂漠」「荒地」という意味です。
背景を見てみると
誰もいない夜更けの砂漠で、王子さまはヘビに、自分の星に残してきたバラの花について話します。
バラの花が、実ははかない存在だったと知った後の王子さまは、それまでと違って口数が少なく、会話は途切れてしまいます。
それでも王子さまは「人はどこにいるの?」とヘビに聞き、そして今回のフレーズになるのです。
特殊な「on」
先ほどもご紹介した通り、「on」という単語は「私」「私たち」「あなた」「あなたたち」「彼/彼女」「彼/彼女たち」すべての意味になり得ます。
またこれ以外にも、一般的な意味での「人」「人々」になることがあり、この使い方も多い、不思議な単語です。
「nous(私たち)」に代わって
「on」で大変多いのが、「nous(私たち)」の代わりにする使い方です。
今回のフレーズ「On est un peu seul dans le désert…」もこれに当たります。
ただし、今回のように「On est ~」とする方が一般的で、これを「Nous sommes ~」としてしまうと、少々違和感があります。
「tu(あなた)」「vous(あなたたち)」に代わって
「tu(あなた)」「vous(あなたたち)」の代わりとして使われる例として、よく聞くのが「On était sage ?(おりこうさんにしていた?)」というフレーズです。
「おりこうさん」でわかる通り、子どもに向かって言う言葉で、人数には関係がなく、1人でも100人でも、この表現が使われます。
一般的な「人」や「人々」
この他にも「人が言うには~」の意味で「On dit que ~」という表現がよく使われます。
この場合の「人」や「人々」は、一般的な意味であり、特定の個人ではありません。
ラクできる「on」の使い方
「on」に関しては、本当に様々な使い方があるのですが、フランス語初心者にとっては、便利だと感じる瞬間があります。
もちろん、3人称単数の活用形だけ覚えておけば「nous(私たち)」の活用形を忘れてしまっても大丈夫、というメリットがあるのですが、それだけではありません。
それは、受動態を使わなくて済む場合です。
例えば、「ガス料金が上がった」と言いたい場合、「on」を主語にすれば「(誰かは分からないが)人が料金を上げた」という言い方になるので、受動態にはなりません。
小さなことのようですが、慣れると「便利だな」と思う瞬間がたびたび訪れますよ!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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