実は大きな違いだった!
「非常に」という意味を表す副詞には「trop」と「très」の2つがありますが、微妙なニュアンスの違いがあります。
今回のフレーズを通して、この違いを考えてみたいと思います。
先に結論を言ってしまうと、「trop」を使うことで相手をディスっており、これを「très」に変えれば、相手に共感を求めているとも取れるぐらい、大きな差になってしまいます。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Non.」と「C’est trop compliqué.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第15章の後半にあります。
地理学者のセリフです。
「non」
「non」は、「はい」「いいえ」の「いいえ」です。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「trop」
「trop」は「あまりに」「非常に」の意味です。
「trop + 形容詞(または副詞)」の形でよく使われます。
「compliqué」
「compliqué」は形容詞で、物事が「複雑な」「わかりにくい」、人が「気難しい」などの意味です。
女性形は「compliquée」ですが、発音は同じです。
背景を見てみると
王子さまは、地理学者の仕事の手順について、具体的な質問を繰り返します。
地理学者は、自分自身が外に出ることはなく、探検家たちの話しを聞いているのだと言います。
そして信用できそうな目撃談があった時の行動について、王子さまが現場を見に行くのかと聞くと、返ってきた答えが、今回のフレーズです。
「C’est très compliqué.」との違い
ここで、「C’est trop compliqué.」という言い方に注目してみます。
意味は「それは非常に複雑だ」になるのですが、「非常に複雑」と言うには、「très」を使って、「C’est très compliqué.」と言ってもよさそうです。
でも、「C’est trop compliqué.」と「C’est très compliqué.」には、微妙な違いがあります。
「C’est trop compliqué.」
「trop」は「あまりにも」という意味を持ちます。
なので、「C’est trop compliqué.」は、何かがあまりにも複雑で、理解や対処が難しいという強調的なニュアンスを含みます。
「trop compliqué」という表現は、何かが非常に難解で、取り組む価値がないと感じる場合に使われることが多いです。
つまり、問題があまりにも複雑で、解決が難しいという否定的な感情を表しています。
「C’est très compliqué.」
「très」は「とても」という意味を持ちます。
なので、「C’est très compliqué.」は、何かがとても複雑であることを指摘していますが、強調の度合いが少なく、「とても複雑だが、理解や解決は可能である」といったニュアンスが含まれます。
つまり、問題が難解であることを認識しているが、それに取り組むことができる可能性があるということを表しています。
王子さまはバカにされている?
王子さまの見た目は子どもで、地理学者に投げかける質問にも、子どもらしさがにじみ出ています。
なので地理学者は、「C’est trop compliqué.」と答えることで、まるで「子どもには理解できない複雑な問題だ」とでも言いたいかのようです。
それは同時に、やはり自分の権威を高めようとしているのかもしれません。
でも、もしもこの場面で地理学者が「C’est très compliqué.」と言っていたとしたら、「自分の仕事は結構やっかいなんだよね~!」という風にも取れるのではないでしょうか?
否定的な言い方をするか、肯定的なニュアンスを残すかで、ずいぶん変わってしまいますね!
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