フランス語版をあきらめないで!
今回のフレーズには倒置が起きているのですが、わかりますか?
疑問文でもないのに倒置があって、初めてフランス語版の『星の王子さま』を読んだ時には、訳が分かりませんでした。
『星の王子さま』が「入門レベルではない」と言われる理由の1つです。
実際私にも、こうした訳の分からない経験をいくつかするうちに、読むのを止めてしまったことが何度かありました。
倒置が起きていることが分からない方にも、詳しくご紹介しますね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Au moins son travail a-t-il un sens. 」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第14章の始めにあります。
第14章で王子さまは、街灯をつける男に出会います。
今回のフレーズは、街灯をつけている挿絵から3つ目にあって、王子さまが心の中で思ったことです。
「au moins」
「au moins」の意味は、「最小限に見積もっても」「少なくとも」です。
「au」は「à」と定冠詞男性・単数の「le」が合わさったもの。
そしてここでの「moins」は男性名詞で、「最小限のこと」という意味です。
「son」
「son」は三人称男性・単数の所有形容詞で、「彼の」「その」という意味です。
同音異義語で男性名詞、「音」という意味の「son」もありますが、ここでは次に男性名詞・単数の「travail」があるので、所有形容詞です。
「travail」
求人情報誌・サイトなどで有名な「仕事」のほか、「勉強」や「(芸術などの)作品」という意味もある男性名詞です。
「a-t-il」
「a-t-il」は倒置形で、本来の形は「il a」です。
「il a」の意味は、「彼は持っている」「ある」などです。
このフレーズは疑問文ではないのに、なぜ倒置が起きているのかについては、後で深掘りします。
「a」
「a」は「持っている」「ある」などの意味の動詞「avoir」の3人称単数の活用形です。
「t」
「t」は、発音のために入れられているもので、何も意味を持ちません。
倒置されて一定の条件がそろうと入れられるのですが、発音しやすくするためだけの役割です。
「il」
「il」は3人称代名詞単数で、「彼」を表すのですが、モノやコトを受けて「それ」の意味になることもあります。
また「il」は、特に意味を持たない場合があります。
「un sens」
「un」は、不定冠詞男性単数形です。
「sens」は、「感覚」「センス」「分別」「意味」などの意味を持つ男性名詞です。
同音異義語で、同じ男性名詞の「sens」もあり、こちらは「方向」「向き」という意味です。
発音も男性名詞という点も同じなので、前後の文脈で判断することになります。
なお、どちらの「sens」とも、語末の「s」が発音されるので、注意してください。
なぜ倒置が起きている?
このフレーズは疑問文ではないのにもかかわらず、倒置が起きています。
それは、「au moins(少なくとも)」が文頭に来ているからです。
「au moins」は文法上、副詞句と呼ばれるのですが、倒置を起こさせる副詞句が何種類かあり、「au moins」はその中の1つなのです。
ただし、このタイプの副詞句が文頭に来れば必ず倒置されるというわけではありません。
最近は減少傾向にあるようです。
背景を見てみると
ごく小さな星にいて、ひとりで街灯をつけたり消したりを繰り返す男を見て、ばかげていると思った王子さま。
でも、それまで出会った他の人々よりは、この男の方がマシだと感じた後、今回のフレーズになるのです。
「彼の仕事」とは?
なので、このフレーズの「son travail」は、この男の仕事、つまり他には誰もいない場所で街灯をつけたり消したりすることです。
今回のフレーズの前で、1度は「ばかげている」と思ったものの、他の人々に比べれば
「au moins(少なくとも)」という限定ながら、評価しているのです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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