隠されたネズミ
今回は私の苦手な、ネズミのお話し。
実は私、世界的に有名なキャラクターさえ、ネズミだというだけで敬遠してしまうほどのネズミ嫌いです。
扱うフレーズの中には「ネズミ」という単語はありませんが、後半で登場します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Il n’y en a qu’un.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の中ほどから終わりに差しかかったところにあります。
第10章では、王子さまと、訪問先の偉ぶった王様との会話が続きます。
今回のフレーズは、王様のセリフです。
「il n’y en a」
「il n’y en a」は否定表現で「それは存在しない」という意味です。
肯定表現なら「il y en a」「それは存在する」になります。
「il」
「il」は3人称代名詞単数で、「彼」を表すのですが、モノやコトを受けて「それ」の意味になることもあります。
このフレーズでの「il」は、特に意味を持ちません。
「n’y」
否定の「ne」と、代名詞の「y」が合わさった形です。
本来の「y」は「そこ」などの意味ですが、ここでの「y」は意味を持たず、「il y a ~」という、決まった形の一部であるだけです。
「en」
「en」は、このフレーズの前の文脈からの指示語で、「それ」や「それら」を指します。
「a」
「a」は、英語の「have」に相当する動詞、「avoir」の直説法現在三人称単数の活用形です。
「il y a ~」の形で使うなら、後ろに複数形が来ても「a」のままです。
ただし時制は変化するので、過去形や未来形への変化はあり得ます。
「qu’un」
「qu’un」は、限定表現です。
「1つだけ」「1つしか」などの意味があります。
「qu’」
「qu’」 は「que」の短縮形で、ここでは「~だけ」「~しか」という意味です。
次の単語「un」が母音から始まっているので、短縮されています。
「un」
「un」は、数字の「1」ですが、男性形です。
女性形なら「une」になり、発音も変わります。
このフレーズの前にあり、指し示されているのが男性名詞なので、「un」を使っています。
「en」は何を指している?
「en」は、このフレーズの前の文脈からの指示語なので、詳細な背景を見てみます。
第10章では、ごく小さな星に住む王様と、訪問者である王子さまとの掛け合いのようなやり取りが続きます。
ひとりぼっちの王様は、王子さまを臣下にしたいので、法務大臣のイスを提案するのですが、裁く人がいないという理由で断られます。
そこで年老いたネズミを裁くよう提案しますが、ネズミは1匹だけ。
「en」が指しているのは、このネズミです。
ネズミは2種類
フランス語の「ネズミ」は、大きく分けて2種類あります。
野ネズミやハツカネズミのような小さなものは、女性名詞の「souris」。
ドブネズミのような大きなものは、男性名詞の「rat」です。
「une souris」「un rat」と覚えましょう。
なお、王様の星にいるのは「rat」の方なので、「qu’un」と言ったのですね。
しかし、自分以外に存在するのはドブネズミだけなんて、かわいそうな王様です。
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