ばかげた価値観
今回のフレーズのある第10章では、何が何でも自分に従わせたい王様と、相手の意向などまったくお構いなしの王子さまの、奇妙なやり取りが続きます。
権威や権力が、いかに価値のないものであるかを、おもしろおかしく描く部分です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Les bâillements sont pour moi des curiosités.」と「C’est un ordre.」の場所と背景を確認しておきます。
この2つのフレーズは、第10章の始めの方にあります。
第10章では、王子さまと、訪問先の偉ぶった王様との会話が続きます。
今回のフレーズは続いていないのですが、すぐ近くにあります。
両方とも王様のセリフです。
「les」
「les」は「ある特定のもの」を指すときに使われる、定冠詞の複数形です。
「bâillements」
「bâillements」は「あくび」を意味する男性名詞「bâillement」の複数形です。
「sont」
「sont」は、英語の be動詞に相当する、être動詞の3人称複数の活用形です。
「pour」
「pour」は前置詞で、いろいろな意味を持つのですが、「~のために」「~の理由で」「~にとっては」などが代表的です。
「moi」
文法上は1人称代名詞の単数です。
意味は「私」ですが、同じ1人称代名詞単数の「je」の強勢形と言われる形です。
「pour ~」の「~」の部分に代名詞が入る時は強勢形になるので、「pour moi」の形になります。
「des」
「des」にはまったく同じスペルの同音異義語があるので、両方をまとめます。
不定冠詞の複数形
不定冠詞を整理しておきます。
- 「un」不定冠詞単数形男性
- 「une」不定冠詞単数形女性
- 「des」不定冠詞複数形
「de」と「les」の単語が合わさった「des」
つまり「de + les = des」ということです。
「de」は「~の~」という意味ですが、「A de B」だと「BのA」なので、日本語とは語順が逆になります。
「de」は前置詞、「les」は定冠詞の複数形です。
「curiosités」
「curiosités」は、「好奇心」「珍しいもの」を意味する女性名詞「curiosité」の複数形です。
「c’est」
「c’est」は「ce」と「est」という、2つの単語が合わさってできています。、
意味は「これ(それ・あれ)は~です」です。
「ce」は「これ(それ・あれ)」を意味します。
「est」は英語の be動詞に当たる、動詞 être の3人称単数の活用形です。
「un」
「des」のところでご紹介した通り、「un」は、不定冠詞男性単数形で、特定できないものを指すときに使われます。
「ordre」
「ordre」は、「順序」「秩序」「命令」「指令」などを意味する男性名詞です。
背景を見てみると
今回のフレーズは、とにかく偉い存在でいたい王様のセリフです。
王様の前でも遠慮なくあくびをする王子さまに「エチケットに反する」ので、あくびを「禁止する」とまで言ったのに、あくびは「止められない」と言い返されます。
するとすぐに前言撤回。
今度は「あくびをするように」「あくびをする人間を何年も見ていない」と言う王様。
それに続くのが今回のフレーズです。
「pour moi」の位置
王子さまと王様は親子でも親戚でもないのに、まるで漫才を見ているかのように続きます。
1つ目のフレーズは、「pour moi」以外の「Les bâillements sont des curiosités」が中心です。
「pour moi」は文中だけでなく、文頭・文末に置いてもOK。
どちらかと言うと、文頭または文末に置いた方が、わかりやすいですよね。
そして、こうして見ると、「pour moi」は「私のために」よりは「私にとっては」の意味で使われているとわかります。
もっと自由に生きよう!
権威や権力を振りかざして、自分に従わせたい王様と、それを見抜いて従わず、自分の知りたいことだけを知ろうとする王子さま。
大人の私たちは、従いたくなくても従い、自分の気持ちにフタをしていることが多いのですが、もっと自由に生きてもいいのでは、と思わせます。
ただし、この王様のような大人は、魅力的でないですね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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