意味の広がりや違いを感じよう!
日本で広く使われている外来語には、フランス語由来のものが少なくありません。
外来語があることでフランス語の単語が覚えやすくなる反面、本来の意味が抜け落ちたり、変わってしまうことすらあります。
外来語・元の単語の両方を知って、意味の広がりや違いを感じてください。
第18回目は、「レポート」です。
日本語の「レポート」
「レポート」に関しては、最初に1つお断りしておく必要があります。
日本語の「レポート」は英語の「report」が由来で、英語風の発音になっています。
また意味に関しても、「学生の課題としての報告書」や「研究・調査・視察などの報告文書」という、やはり英語寄りです。
- レポート①「学生の課題としての報告書」
- レポート②「研究・調査・視察などの報告文書」
英語の「report」
前述通り、日本語の「レポート」は英語の「report」から入った外来語です。
英語の「report」は名詞ですが、語源をたどると、元のラテン語は動詞でした。
元のラテン語はフランス語の動詞「reporter」になり、これが名詞化されて「report」になって英語に入ります。
ただしフランス語では音の関係上「report」という名詞が定着せず、「rapport」になりました。
つまり現在のフランス語では
- 動詞「reporter」
- 名詞「rapport」
という形になっています。
なので発音やつづりは違いますが、「レポート」のそもそもの語源はフランス語の「rapport」ということになります。
フランス語の「reporter」と「rapport」
フランス語の動詞「reporter」は、「porter(運ぶ)」に「re-」がついたものです。
「re-」には「繰り返し」「後ろへ・戻す」「強調・完了」といった意味があり、「reporter」の場合は「後ろへ運ぶ」というのが本来の意味でした。
それが現在使われている「延期する」「報告する」「責任をなすりつける」といった意味に広がりました。
「reporter」が名詞化されてできた「rapport」には、「報告」「関係」「比率」といった意味があります。
フランス語の動詞「reporter」の使い方をまとめると、
- 動詞reporter①「延期する」
- 動詞reporter②「報告する」
- 動詞reporter③「責任をなすりつける」
フランス語の名詞「rapport」の使い方をまとめると、
- 名詞rapport①「報告」
- 名詞rapport②「関係」
- 名詞rapport③「比率」
ということになります。
「reporter」の意味の広がり
動詞「reporter」の意味は「延期する」「報告する」「責任をなすりつける」。
一見すると何のつながりもない、3つの異なった意味に見えて、覚えにくいですよね?
それでも前述通り、「reporter」の場合は「後ろへ運ぶ」というのが本来の意味なので、「延期する」という意味はわりと直接的な広がり方です。
そしてこの「後ろへ運ぶ」は「あるところから別のところに運ぶ」というイメージになり、 情報を運んで伝えることにも使われたので、「報告する」という意味にもなりました。
さらには、自分の過ちや責任を、自ら持ち続けずに、他の人に運んでゆだねるというイメージも持つようになったことから、「責任をなすりつける」という意味でも使われるようになったのです。
「rapport」の意味の広がり
名詞「rapport」は、前述通り動詞「reporter」の名詞化によってできた単語です。
そのため。「報告」「関係」「比率」の3つのうち、「報告」に関しては動詞reporter②「報告する」から来ていることがわかります。
そして動詞の持つ「後ろへ運ぶ」は「あるところから別のところに運ぶ」というイメージになり、それがさらに「何かを持ち帰ってつなぐ/結びつける」というイメージが比喩化したため、人や物事の間のつながり、関係性を表すようになったことから「関係」という意味を持つようになりました。
一方、比喩化した「何かを持ち帰ってつなぐ/結びつける」というイメージは、「物や量を対応づける/比較する」イメージも派生させるようになり、「比率」という意味でも使われるようになりました。
フランス語に限ったことではないようですが、比喩的な意味の広がりが多いので、1つの単語がさまざまな意味で使われているのです。
いろいろな「reporter」と「rapport」
「reporter」と「rapport」の使用例を挙げておきます。
- On va reporter la réunion à demain.
(会議を明日に延期します)
→ 動詞reporter①「延期する」
- Il a reporté la nouvelle à son chef.
(彼は上司に新たな報告をした)
→ 動詞reporter②「報告する」
- Elle reporte la faute sur son frère.
(彼女は兄に責任をなすりつけた)
→ 動詞reporter③「責任をなすりつける」
- J’ai écrit un rapport sur le projet.
(プロジェクトについて報告書を書いた)
→名詞rapport①「報告」
- Il a de bons rapports avec ses voisins.
(彼は近所の人たちと良い関係を持っている)
→名詞rapport②「関係」
- Le rapport est de 2 à 1.
(比率は2対1だ)
→名詞rapport③「比率」
などがあります。
日本語の「レポート」は、名詞rapport①「報告」の一部の意味にすぎないということが、わかりますね!
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