例外を知って覚えよう!
今回のフレーズには、例外的な使い方になっている部分があります。
本来はよく使われる表現なので、例文とともにご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Je suis sérieux, moi, je ne m’amuse pas à des balivernes !」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第13章の挿絵から4行目にあるビジネスマンのセリフです。
「je suis sérieux, moi」
「je」は「わたし」、「suis」は、「être」の活用形(現在形)です。
「sérieux」は、人に対して使うなら「まじめな」「勤勉な」「熱心な」「誠実な」「真剣な」、事柄について使うなら「重大な」「深刻な」「顕著な」という意味です。
「sérieux」の女性形は「sérieuse」で、語尾の「s」は、音が「z」になります。
「moi」は「je(わたし)」の強勢形と言われる形です。
「je ne m’amuse pas à des balivernes」
「je」は「わたし」、「ne ~ pas」は否定語で「~ない」。
「m’amuse」は「わたしを」「わたしに」を意味する「me」の省略形「m’」と「amuser」の活用形(現在形)の「amuse」が合わさったものです。
「amuser」は(人を)「楽しませる」「おもしろがらせる」という意味ですが、ここでの「me(m’)」は「自分を」「自分に」と捉えられる再帰代名詞なので、「自分を楽しませる」「自分をおもしろがらせる」になります。
つまり「楽しむ」「おもしろがる」という意味になります。
「à」は前置詞、「des」は不定冠詞複数形、「balivernes」は「くだらないこと」という意味の女性名詞「baliverne」の複数形です。
背景を見てみると
王子さまが4番目に訪問したのは、1人で計算ばかりを繰り返すビジネスマンが暮らす小さな星でした。
計算に夢中なあまり、くわえたタバコに火がついていないことにすら、気がついていない様子です。
王子さまはビジネスマンがつぶやく数字について質問したのですが、そのせいでビジネスマンは気が散ってしまったようです。
自分は忙しいと訴えたビジネスマンは、早く王子さまから解放されたがっているようです。
代表的な使い方
さて、冒頭で触れた「例外的な使い方」になっているのは、後半の「je ne m’amuse pas à des balivernes」の部分です。
このうちの「me(m’)」は再帰代名詞であると前述しましたが、それはつまり「m’amuse」の部分が代名動詞「s’amuser」だということです。
「s’amuser」は、次の2つの形で使われることが多いです。
- s’amuser à + 動詞の原形
→ 「~して遊ぶ」「~するのを楽しむ」 - s’amuser + 前置詞 + 名詞
→ 「~で遊ぶ」「~を楽しむ」
s’amuser à + 動詞の原形
まずは「à + 動詞の原形」のついた例文から。
- Il s’amuse à courir.
(彼は走るのを楽しんでいる) - On s’amuse à faire des blagues.
(冗談を言って楽しんでいる) - Les enfants s’amusent à sauter partout.
(子どもたちはあちこち飛び跳ねて遊んでいる)
s’amuser + 前置詞 + 名詞
次に「s’amuser + 前置詞 + 名詞」の例文も見てみます。
- Je m’amuse avec mes enfants.
(子どもたちと遊んでいる)
- Les enfants s’amusent avec des jouets.
(子どもたちはおもちゃで遊んでいる)
ビジネスマンの言い分
こうしてみると、今回のフレーズの後半「je ne m’amuse pas à des balivernes」の「à」も前置詞なので、「s’amuser + 前置詞 + 名詞」になっています。
一見すると例外には見えないのですが、実は「s’amuser + 前置詞 + 名詞」の前置詞には、上記の例文にあったように「avec」が使われるものがほとんどです。
まれに「de」を伴ったり、今回のフレーズのように「à」になるケースもあるのですが、その場合は強調されたり、皮肉っぽい言い回しになるなど、特別な感情が込められることになります。
今回のフレーズも、文末に「!」がついていて、これを言ったビジネスマンには特別な感情があることがわかりますよね?
「je ne m’amuse pas à des balivernes !」で、「くだらないことで遊ばない」ということになりますが、それはつまり「(王子さまの質問に答えるような)くだらないことに割いている時間などない!」と言いたいようです。
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント