394 「sembler」で断言は避けよう! Il me semble que les conditions sont favorables…

動詞

上手なコミュニケーション手段に!

今回のフレーズには「~のように思われる」「~らしく見える」という意味の「sembler」が使われています。

何かを言いたいけれど、言ってしまうと弊害もある…といった場合に、断言せずに済ませられるので、知っておくと便利です。

使い方によっては、さらに意味をぼかすことも可能です!

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Il me semble que les conditions sont favorables…」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第10章の終わりの方にある王子さまのセリフです。 

「il me semble que les conditions sont favorables」 

ここでの「il」は形式的な主語、「me」は「わたしを」「わたしに」を意味する1人称代名詞目的格、「semble」は「~のように思われる」「~らしく見える」という意味の「sembler」の活用形(現在形)です。

ここでの「que」は接続詞、「les」は定冠詞複数形、「conditions」は「条件」「状況」などの意味の女性名詞「condition」の複数形です。

「sont」は「être」の活用形(現在形)、「favorables」は「好意的な」「都合のよい」「有利な」「好ましい」という意味の形容詞「favorable」の複数形です。 

背景を見てみると 

旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。 

王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。 

王様は何にでも命令できるというので、王子さまは太陽に沈むように命じてほしいとお願いするのですが、結局は日没の時間まで待つことになるのだとわかります。

王子さまは退屈なので出発したいのですが、王様は強く引き留めようとします。

今回のフレーズでは、どうしてもすぐに出発したくなった王子さまが、王様をうまくかわす場面です。

このフレーズの意味

今回のフレーズに使われている「il me semble que ~」という言い方は、慣用表現のようになっています。

「わたしには~のように思われる」という意味です。 

「que」の後にある「les conditions sont favorables」で「条件/状況は好ましい」という意味なので、全体としては「わたしには条件/状況が好ましいように思われる」ということです。

言葉巧みな王子さま

なお今回のフレーズは、1人で小さな星に暮らす王様への、王子さまの最後のひと言です。

本来は礼儀正しいはずの王子さまですが、このフレーズの後は、挨拶もなく出発してしまいます。

なぜそうしたことが可能だったのでしょうか?

それは、王様が何にでも自分の言うことを聞かせようとする心理を使って、王子さまに出発を命じるように仕向けたからです。

実際、挨拶もなく出発した王子さまの背後から、王様は「君に外交官になるよう命じる!」と叫んでいます。

確かに、好ましい条件/状況になっていたようですね。

個人 vs 一般

ところで「il me semble que ~」で「わたしには~のように思われる」という意味ですが、「me(わたしを/わたしに」を取ると、ニュアンスが若干変わります。

  • Il me semble que tu as raison.
    (わたしには君が正しいように思われる)

「me」が付いている場合は、感覚や判断が「わたし」の主観的なモノだと強調しています。

  • Il semble que tu as raison.
    (君が正しいように思われる)

「me」がない場合は、一般的な感覚や判断によるものです。

「me」のあるなしで、「わたしにとっては」という個人的な意見なのかどうかが変わります。

わたし以外の立場なら?

そして「il me semble que ~」の「me」を他の人称代名詞目的格にすることによって、他の人の立場での感覚や判断を示すことができます。

  • Il te semble que c’est juste ?
    (君にはそれが正しいように思える?)
  • Il lui semble que la décision est difficile.
    (彼/彼女にはこの決定が難しいように思える)

この「il 〇〇 semble que ~」の「〇〇」が3人称になる場合は、直接目的ではなく、間接目的の方を使います。

単数なら「lui」、複数なら「leur」を使うということです。

ただし3人称代名詞間接目的は、単数・複数とも男女同形なので、性別に関しては文脈から判断するしかありません。

1人称や2人称に関しては、直接目的・間接目的が同形なので、気にする必要はありません。

個人名などなら?

これまで見てきた「il 〇〇 semble que ~」という形は、「〇〇」に代名詞が入るものでした。

でも個人名などになるなら、形や語順が少し変わります。

  • Il semble à Marie que c’est une bonne idée.
    (マリーにはそれが良いアイデアのように思える)

代名詞の場合は動詞の前に来るので「il 〇〇 semble que ~」という語順でした。

個人名などの名詞なら、前置詞の「à」をつけて動詞の後に来るので「il semble à 〇〇 que ~」という形になります。

これは個人名だけでなく、他の名詞でも同じです。

  • Il semble à l’enfant que la journée est longue.
    (子どもには1日が長く感じられる)

「子どもには」の部分が「à l’enfant」になり、動詞の後ろに来ていますね。

使用頻度としては、やはり「il me semble que ~(わたしには~のように思われる)」が多いので、まずはこの形を覚えて、他は少しずつ慣れていきましょう!

この記事を音声で聞くなら 

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね! 

コメント

タイトルとURLをコピーしました