上手なコミュニケーション手段に!
今回のフレーズには「~のように思われる」「~らしく見える」という意味の「sembler」が使われています。
何かを言いたいけれど、言ってしまうと弊害もある…といった場合に、断言せずに済ませられるので、知っておくと便利です。
使い方によっては、さらに意味をぼかすことも可能です!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Il me semble que les conditions sont favorables…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の終わりの方にある王子さまのセリフです。
「il me semble que les conditions sont favorables」
ここでの「il」は形式的な主語、「me」は「わたしを」「わたしに」を意味する1人称代名詞目的格、「semble」は「~のように思われる」「~らしく見える」という意味の「sembler」の活用形(現在形)です。
ここでの「que」は接続詞、「les」は定冠詞複数形、「conditions」は「条件」「状況」などの意味の女性名詞「condition」の複数形です。
「sont」は「être」の活用形(現在形)、「favorables」は「好意的な」「都合のよい」「有利な」「好ましい」という意味の形容詞「favorable」の複数形です。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
王様は何にでも命令できるというので、王子さまは太陽に沈むように命じてほしいとお願いするのですが、結局は日没の時間まで待つことになるのだとわかります。
王子さまは退屈なので出発したいのですが、王様は強く引き留めようとします。
今回のフレーズでは、どうしてもすぐに出発したくなった王子さまが、王様をうまくかわす場面です。
このフレーズの意味
今回のフレーズに使われている「il me semble que ~」という言い方は、慣用表現のようになっています。
「わたしには~のように思われる」という意味です。
「que」の後にある「les conditions sont favorables」で「条件/状況は好ましい」という意味なので、全体としては「わたしには条件/状況が好ましいように思われる」ということです。
言葉巧みな王子さま
なお今回のフレーズは、1人で小さな星に暮らす王様への、王子さまの最後のひと言です。
本来は礼儀正しいはずの王子さまですが、このフレーズの後は、挨拶もなく出発してしまいます。
なぜそうしたことが可能だったのでしょうか?
それは、王様が何にでも自分の言うことを聞かせようとする心理を使って、王子さまに出発を命じるように仕向けたからです。
実際、挨拶もなく出発した王子さまの背後から、王様は「君に外交官になるよう命じる!」と叫んでいます。
確かに、好ましい条件/状況になっていたようですね。
個人 vs 一般
ところで「il me semble que ~」で「わたしには~のように思われる」という意味ですが、「me(わたしを/わたしに」を取ると、ニュアンスが若干変わります。
- Il me semble que tu as raison.
(わたしには君が正しいように思われる)
「me」が付いている場合は、感覚や判断が「わたし」の主観的なモノだと強調しています。
- Il semble que tu as raison.
(君が正しいように思われる)
「me」がない場合は、一般的な感覚や判断によるものです。
「me」のあるなしで、「わたしにとっては」という個人的な意見なのかどうかが変わります。
わたし以外の立場なら?
そして「il me semble que ~」の「me」を他の人称代名詞目的格にすることによって、他の人の立場での感覚や判断を示すことができます。
- Il te semble que c’est juste ?
(君にはそれが正しいように思える?)
- Il lui semble que la décision est difficile.
(彼/彼女にはこの決定が難しいように思える)
この「il 〇〇 semble que ~」の「〇〇」が3人称になる場合は、直接目的ではなく、間接目的の方を使います。
単数なら「lui」、複数なら「leur」を使うということです。
ただし3人称代名詞間接目的は、単数・複数とも男女同形なので、性別に関しては文脈から判断するしかありません。
1人称や2人称に関しては、直接目的・間接目的が同形なので、気にする必要はありません。
個人名などなら?
これまで見てきた「il 〇〇 semble que ~」という形は、「〇〇」に代名詞が入るものでした。
でも個人名などになるなら、形や語順が少し変わります。
- Il semble à Marie que c’est une bonne idée.
(マリーにはそれが良いアイデアのように思える)
代名詞の場合は動詞の前に来るので「il 〇〇 semble que ~」という語順でした。
個人名などの名詞なら、前置詞の「à」をつけて動詞の後に来るので「il semble à 〇〇 que ~」という形になります。
これは個人名だけでなく、他の名詞でも同じです。
- Il semble à l’enfant que la journée est longue.
(子どもには1日が長く感じられる)
「子どもには」の部分が「à l’enfant」になり、動詞の後ろに来ていますね。
使用頻度としては、やはり「il me semble que ~(わたしには~のように思われる)」が多いので、まずはこの形を覚えて、他は少しずつ慣れていきましょう!
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント