343 類義語を知ることで実感しよう! Je ne crains rien des tigres, mais j’ai horreur des courants d’air.

動詞

3種類の類義語で実感しよう!

今回のフレーズには2種類のネガティブ表現が含まれています。 

それぞれの類義語として、よく使われるものも例文とともにご紹介します。 

なお、フランス語で読むからこそ味わえる、作者の繊細なテクニックについても触れています。 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Je ne crains rien des tigres, mais j’ai horreur des courants d’air.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは第8章の3枚目の挿絵から4行目にある、バラの花のセリフです。 

「je ne crains rien des tigres」

「je」は「わたし」、ここでの「ne」は「何も~ない」という意味の「ne ~ rien」の一部です。 

「crains」は「(人・モノを)恐れる」「(事柄を)心配する」という意味の「craindre」の活用形(現在形)です。 

「des」は不定冠詞複数形、「tigres」は「トラ」という意味の男性名詞「tigre」の複数形です。 

「mais j’ai horreur des courants d’air」

「mais」は「しかし」「けれども」、「j’ai」は「je(わたし)」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。 

「horreur」は「恐怖」「(人・モノ・事柄に対する)嫌悪感」という意味の女性名詞ですが、「avoir horreur de +(名詞)」という形で、「~が大嫌いである」という意味です。 

ここでの「des」は、「avoir horreur de +(名詞)」の一部としての「de」と定冠詞複数形の「les」が合わさったものです。 

「courants」「流れ」「電流」などの意味の男性名詞「courant」の複数形、「d’air」は前置詞の「de」の省略形「d’」と「空気」という意味の男性名詞「air」が合わさったものです。 

「courant d’air」で「気流」「すきま風」などを意味しますが、詳細は後述します。 

背景を見てみると

遠く離れた地球の、それも人里離れた砂漠で、王子さまは自分の星に残してきた1輪のバラの花を思っています。 

ある朝花開いたバラと出会い、王子さまはすぐにその美しさに夢中になりました。 

わがままで見栄っ張りなバラは、王子さまの自分を思う気持ちを利用するかのように、いろいろと要求するようになります。 

今回のフレーズは、風をよけるための衝立を頼もうとするバラの花が、王子さまにその理由を言っている部分です。 

「コワイ」とその類義語

このフレーズの前半部分「je ne crains rien des tigres」は「トラはちっとも怖くない」という意味です。 

「craindre ~」は、一般的に不安や心配を表す際に使います。 

「~することが起こるかもしれない」といった、漠然とした恐れや懸念を意味します。 

類義語に「avoir peur de ~」があります。 

こちらも意味は「~を怖がる」「~を恐れる」なのですが、「craindre ~」よりも、もっと直接的な恐怖の感情を表します。 

2種類の「地震が怖い」の違い

この2種類の違いは、「地震が怖い」というフレーズで違いがわかります。 

  • Je crains des tremblements de terre. 
  • J’ai peur des tremblements de terre. 

どちらも「地震が怖い」という表現ですが、 

  • 「craindre ~」は「これから来るかもしれない地震」に対する恐怖 
  • 「avoir peur de ~」は「すでに地震を体験している人」が直接的に感じる恐怖 

という違いがあります。 

「大嫌い」とその類義語

今回のフレーズの後半部分「j’ai horreur des courants d’air」は「風が大嫌い」という意味です。 

「avoir horreur de ~」は、強い嫌悪感や反感を表します。  

類義語に「détester ~」があります。 

こちらも意味は「~が大嫌いである」なのですが、少しカジュアルな使い方であり、「avoir horreur de ~」に比べれば、多少軽い嫌悪感だと言えます。 

2種類の「ウソが大嫌い」の違い

この2種類の違いは、「ウソをつくのが大嫌い」というフレーズで違いがわかります。 

  • J’ai horreur de mentir. 
  • Je déteste mentir. 

どちらも「ウソをつくのが大嫌い」という表現ですが、 

  • 「avoir horreur de ~」は強い嫌悪感と、拒絶の感情が強調されている 
  • 「détester ~」は嫌悪感を表している 

という違いがあります。 

前述通り、「horreur」には「恐怖」という意味もあるので、「鳥肌が立つほど大嫌い」というような、感情的な強調が感じられる表現です。 

和訳しにくい表現とその類義語

ところで、先ほど「courant d’air」は「気流」「すきま風」などを意味するとご紹介しました。 

ただしこの「courant d’air」は、ひと言では和訳しにくい表現です。 

こちらも類義語と比較することで、わかりやすくなります。 

courant d’air

 「空気の流れ」や「風の流れ」を指し、特に家の中などの閉じた空間内での空気の移動を表します。 

よく使われる場面としては、窓を開けたときに部屋の中に入る空気の流れや、ドアの開閉によってできる風などを指す場合です。 

vent

 「vent」は「風」を指し、屋外での自然の空気の流れを表します。 

こちらは気象や自然現象としての「風」なので、穏やかな風だけではなく、強風や嵐の風など、さまざまな状況での屋外の風を表現するのに使います。 

屋外なのに?

つまり一般的に「courant d’air」は「(屋内での)空気の流れ」、「vent」は「(自然現象の)風」ということです。 

ですが今回のフレーズは、明らかに屋外で咲いたバラの花のセリフのはずです。 

先ほど、後半部分「j’ai horreur des courants d’air」を簡単にご説明するために「風が大嫌い」としましたが、実は「courant d’air」を「風」にしてしまうのは、少々乱暴です。 

でも、なぜ『星の王子さま』の作者は、この場面で「vent(風)」という単語を使わずに「courant d’air(空気の流れ)」を使ったのでしょうか? 

それはおそらく、バラの花の繊細さを際立たせるためだったのだと思います。 

自然現象であり、ともすれば強風にもなり得る「vent」ではなく、屋内のちょっとした空気の流れを指すことが一般的である「courant d’air」を使うことによって、バラの花がいかにか弱く繊細かを強調したかった、という意図によるものでしょう。 

ここにも作者の、繊細なテクニックが隠れているということですね! 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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