若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第11回目「fac」です。
「fac」とは?
「fac」は「faculté」の略で、フランスの大学の「学部」のことです。
この「fac」は、かなり古くからある略語なので仏和辞書に載っていることも多いのですが、誤解されやすい単語です。
まず、「faculté」は大学ではなく、大学の中の「学部」です。
「大学」は「université」と言います。
そして「fac」は略語ですが、元になった単語である「faculté」自体も、現在は正式名称ではありません。
「学部」という意味の正式名称は「UFR」と言い、「faculté」は古い名称なのです。
「UFR」は「Unité de Formation et de Recherche(教育研究ユニット)」の頭文字です。
不思議な略語の「fac」
実は50年ほど前の1970年代から「UFR」が正式名称なのですが、特に話し言葉では、いまだに「faculté」とその略語である「fac」ばかりが使われています。
そのため、かなり以前から「fac」は若者言葉ではなく、高齢者なども使う言葉になっています。
もっとも、ていねいな言葉遣いをすべき場面では「faculté」を使った方が無難です。ただし正式名称の「UFR」の方は、知らないフランス人もいるほどなので、これを使うぐらいなら「fac」の方がよほど通じます。
「fac」の使用例
使用例としては、たとえば
「Je suis en première année à la fac de médecine.」
(医学部の1年目です)
のように言います。
フランスには日本のように多くの私立大学はないので、その人がいる街などがわかっていれば、学部名だけで通じることがほとんどなのです。
「fac」以外の教育機関①
なお、学部が1つだけの単科大学に相当する教育機関は「université」ではなく、そのため学部も「UFR」ではありませんし、「faculté」や「fac」とも呼ばれません。
専門的な高等教育機関として有名なのが「grande école」で、入学試験がとても難しい、フランス独特の高等教育機関です。
「grande école」は特別なカリキュラムが組まれている、いわばエリート養成機関です。
「fac」以外の教育機関②
そして「collège de France」という、学術的な研究を行っている有名な教育機関もあります。
ただし現代の「collège」とは、日本の中学校に当たる教育機関を指すことがほとんどです。
フランスの義務教育は、幼稚園の3年間、小学校の5年間、中学校つまり「collège」の4年間です。
「collège」は、昔は高等教育機関を指す言葉だったのですが、現代は通常「中学校」のことです。
「collège de France」など一部の学校名には、歴史的な影響で残っているにすぎません。
英語圏の「カレッジ」と同じ語源を持つ言葉ですが、普通は中学校のことなので、混同しないでくださいね!
この記事を音声で聞くなら
この記事は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックで該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
コメント