日本もある!
フランスは美食やファッションの国と言われて、外国からは食とモードばかりが注目される傾向があります。
それをフランス人自身も自覚しているからなのか、家のあちこちによその国の名前のついた設備などを入れたがるのが、最近の傾向です。
「日本」がついたモノも、ありますよ!
「cuisine américaine」
まず、今回ご紹介する中でおそらく最も古くからあるのは、「cuisine américaine(アメリカのキッチン)」と呼ばれるものです。
これは何かと言うと、いわゆる「オープンキッチン」です。
単なる調理スペースとして独立させるのではなく、リビングスペースと一体化させるオープンキッチンが、1990年代後半から2000年代初めにかけて全国的に普及しました。
名まえが「cuisine américaine」 になったのは、アメリカの影響を受けてキッチンが家の中心となったからのようです。
料理中も家族やゲストと話しができたり、一緒に料理もできるというスタイルが、多くのフランス人に受け入れられたのです。
フランスでは建物を壊して建て直すということをほとんどしないので、日本に比べると新築物件は少ないのですが、今や新築の家には「cuisine américaine」がスタンダードになっています。
「douche italienne」
「douche italienne(イタリアのシャワー)」が全国的に広まったのは、2010代になってからです。
これは「フラットシャワー」と呼ばれる、オープンで段差のないシャワー空間です。
日本のバスルームを基準に考えると分かりにくいのですが、そもそもフランスのバスルームにはバスタブがないことがよくあります。
バスタブがある家なら、シャワーもそこに付いているのですが、ない場合はキャビン型のシャワーがほとんどでした。
また、キャビン型の閉鎖空間ではなくても、シャワーのお湯を受けるためのシャワートレイが必須で、シャワーを使うには何らかの段差があったのです。
でもこうした段差は、バリアフリー設計では困りもの。
始めはそうした理由で広まったのが「douche italienne」です。
そのうちに見た目がスッキリしていておしゃれということでさらに広まり、「douche italienne」も「cuisine américaine」とともに新築の家のスタンダードになりました。
「日本の〇〇」とは?
そして「日本の〇〇」という名前のモノは、いくつもあります。
その中でフランス人が一番驚いたのは、おそらくシャワートイレだと思います。
2000年代初めの頃、仕事で日本に行ったフランス人に「日本のトイレはスゴイね!できることなら家にも欲しい!」と言われたのを初めに、これまで何人に同じことを言われたことか…。
ただし初めは売っているお店がなく、実際にフランスでシャワートイレが売られているのを見たのは、2010年代に入ってからだったと思います。
その後「家のトイレにつけた!快適だね~!」と言われることがちらほら、という具合でしたが、今や大手のDIYショップでシャワートイレを売っていないお店はないと思います。
ただし有名にはなっても、「cuisine américaine」や「douche italienne」のように新築の家のスタンダードになるほどではなく、まだ強烈なファンやお金に余裕がある人が買うモノという感じです。
名称について
ところで、フランス語のシャワートイレは言い方が3つほどあります。
「toilettes japonaises」「toilette japonaise」「WC japonais」です。
どれも「日本のトイレ」なのですが、これには理由があります。
まずフランスで「トイレ」という場合、「toilettes」と複数形にするのが正式であり、普通です。
この単語は女性形なので、「日本の」の部分も複数女性形になって「toilettes japonaises」というのが文法的に正しい名称です。
ところが同じフランス語圏でも、ベルギーやスイスなどではトイレを単数形にするので「toilette japonaise」という表記もあるのだと考えています。
そしてもっとシンプルな名前にするために、またトイレが単数か複数かという問題に触れずに済むという便利さもあり、英語由来の「WC」が使われて「WC japonais」もよく見かけます。
その他の「日本の〇〇」
「日本の〇〇」は他にもまだあり、代表的なモノをご紹介しておきます。
- 「stores japonais」日本のブラインド
- 「rideaux japonais」日本のカーテン:「のれん」のこと
- 「porte japonaise」日本のドア:「障子」のこと
- 「lampe japonaise」日本のランプ:竹や紙を使ったランプシェード
マーケティングの賜物
小物などを含めると他にもたくさんありますし、「futon(布団)」「tatami(畳)」に限らず、日本語由来の外来語として有名になった単語は本当に多いです。
ただし「これ、日本とは関係ないのでは?」と思うモノも。
例えば「stores japonais(日本のブラインド)」という名前で売られていますが、私はこのタイプのブラインドを、長い間日本で見たことがありませんでした。
最近は逆輸入されたのか、日本でも「ローラーブラインド」という名前で売られているのを見かけます。
かなり昔から、フランス人には「日本の〇〇」がおしゃれだと感じる人が多く、この「stores japonais(日本のブラインド)」という名前も、マーケティング戦略の賜物のようです。
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