若者言葉から昇格した略語
フランス語で話していると、仏和辞書などには載っていないような言葉も耳にします。
元は若い人たちが仲間内で使っていた略語などがほとんどですが、時間とともに社会的にも認知されて、多くの人が使うようになった言葉です。
かしこまった場では使わなくても、仲の良い同僚となら使う程度の略語や派生語などを中心にご紹介します。
今回はその第9回目「appart」です。
「appart」とは?
「appart」は「appartement」の略で、集合住宅の1室、つまり日本語のマンションやアパートの1室のことです。
発音するときは、語尾の「t」も発音します。
本来なら語尾の「t」は発音されないはずで、元の単語である「appartement」の語尾も発音されないのですが、略語の「appart」は発音します。
なお、意味については「集合住宅の1室」としましたが、1部屋という意味ではありません。
「appart」と聞くと、どうしても日本語の「アパート」が連想されるので、狭い1室を思い浮かべるかもしれませんが、単に集合住宅という意味なので、200㎡やそれ以上の「appart」もたくさんあります。
「appart」の関連単語
ちなみに「ワンルームマンション」に相当する単語として「studio」があり、本来は「appart」や「appartement」とは言わないのですが、特に話し言葉では区別されないことも多いです。
また、建物としてのアパートやマンション、つまり1棟丸ごとに相当する単語には「immeuble」があります。
こちらも本来なら「appart」や「appartement」ではないのですが、話し言葉では区別されないことがあります。
「appart」の使用例
「appart」は例えば、
「Je cherche un nouvel appart en ville.(街なかで新しいマンションを探している)」
のように使います。
元の単語「appartment」が男性名詞なので、「appart」も男性名詞として扱われるのはもちろん、どちらも母音から始まる単語なので、「形容詞 + 名詞」の語順になる形容詞は、形が変わる場合があります。
「un nouvel appart(新しいマンション)」の「新しい」に相当する形容詞は「nouveau」ですが、母音から始まる名詞の前なので「nouvel」という形にします。
また、この場合の「un nouvel appart(新しいマンション)」とは、話し手にとって「新しい引っ越し先」としての「新しい」であって、「新築」という意味ではありません。
フランスでは、基本的に建物を壊して建て直すということが珍しいので、街なかで新築物件を見つけるのは、ものすごく難しいのです。
「appart」の語源
ところで、「appart」つまり「appartement」の語源はラテン語ですが、日本語の「アパート」の元になった英単語の語源も、同じラテン語の単語なのだそうです。
そして日本語の「マンション」も英語由来です。
「マンション」の語源となった英単語は、そもそも「大邸宅」や「豪邸」を意味していて、集合住宅の意味はないそうです。
つまり「豪華な集合住宅」を「アパート」とは区別するために使われるようになった外来語が「マンション」ということですね!
またさらに調べてみると、「マンション」の語源となった英単語と、フランス語の「maison(家)」の語源は同じラテン語でした。
フランス語の「maison」には「大邸宅」や「豪邸」の意味はなく、集合住宅でない限りは「maison」と呼ばれます。
一軒家だけでなく、家と家がつながっているテラスハウスも「maison」です。
日本語の「アパート」と「appart」の語源が同じというのは想像の範囲内だったのですが、「マンション」と「maison」の語源が一緒というのは、明らかに想定外でした!
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